(2023/1/25 05:00)
岸田文雄政権が方針を大きく転換した原子力政策も通常国会の焦点となる。東日本大震災以降、封印してきた原発の新増設や再稼働の推進、老朽化原発の稼働期間延長を決め、関連する改正法案を今国会に提出する。環境対策と電力の安定供給を両立する政策転換として評価できる。原発の安全神話が崩れているだけに、国民の不安を拭う丁寧な説明も政権には求めたい。
他方、使用済み核燃料の最終処分や、稼働60年超を認める原発の点検内容など具体策の議論が先送りされている。安全最優先でこれら課題に取り組み、脱炭素のベースロード電源(低コストで安定供給できる電源)としての重要な役割を担いたい。
ウクライナ情勢を背景にエネルギー価格は高原状態にあり、エネルギー自給率が1割強にとどまる日本は企業・家庭に節電協力を求めるほど電力の安定供給に課題を残す。再生可能エネルギーを主力電源化しつつ、ベースロード電源として原発を最大限活用するとの政権の方針転換は、現実的で適切な政策判断と言える。新たな安全メカニズムを組み込んだ次世代型原子炉の実用化は2030年代とされており、少なくともそれまでは原発の再稼働や稼働期間延長により、安定的な電力の供給体制を整えることが求められる。
今通常国会には「原則40年、最長60年」とした原発の運転期間を延ばす原子炉等規制法改正案が提出される。原子力規制委員会の審査などで停止していた期間を除外することで、60年超の運転を可能にする。ただ60年超は未経験で特別な審査が求められる。このため60年超原発の具体的な点検内容は、改正法施行後に慎重に議論するという。点検漏れを許さない確かな対策を講じてもらいたい。
米国は原発の運転期間を40年と規定し、規制当局の審査を経れば20年の延長が可能。延長回数に制限はないという。ただ地震大国の日本とは原発の立地環境が大きく異なる。日本は次世代原子炉にバトンを渡すまで、安全を最優先にした老朽化原発の対応と再生可能エネルギーの主力電源化に万全を期したい。
(2023/1/25 05:00)
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