第53回機械工業デザイン賞IDEA、栄誉に輝く18製品

(2023/7/20 05:00)

審査概要

専門審査委員代表(東京芸術大学名誉教授 )尾登誠一

高度経済成長期の1970年(昭45)、日刊工業新聞創刊55周年記念事業として発足した「機械工業デザイン賞」は、経済産業省・文部科学省・特許庁・日本商工会議所・産学6団体の支援を受け今日に至っている。

今回は、応募が31社31件(内、大企業22社22件、中小企業9社9件)と昨年に比べ若干の減少ながら、特に中小企業の応募は増加した。その内容は工作機械や食品機械、ロボット関連製品、環境整備機器など多岐にわたった。

審査は4月7日開催の「第一次審査委員会(書類審査)」で21件を選定。5月9日から6月9日まで延べ20日間、専門審査委員が応募企業や納入先を訪れ「第二次現物審査(出張審査)」を行った。その後、6月30日開催の「総合審査委員会」で慎重審議の結果18件を選定した。なお、今回はデジタル変革(DX)デザインや持続可能な開発目標(SDGs)、カーボンニュートラルというテーマをグローバルビジョンとして共有するのが特徴であった。

今回の応募製品を総括すると、新技術の開発やイノベーションを創出した事例が散見され、従来技術の高度化や熟成に代表されるハードウエア開発の優位性を誇示する製品が多数を占めた。コモディティー化対策でユーザーインターフェースを基盤としたソフトウエア開発に活路を求め、操作体系で優れた製品が数多くあった。デザインを広義に解釈する本顕彰制度の趣旨からも、これらソフト機能の充実策やハードとソフトの融合策、ハードのソフト化・ソフトのハード化は非常に好ましく、過去の受賞製品群と比較して完成度は格段に向上している。

開発担当者や関係各位に対する感謝の念と共に、専門審査委員を代表して深く敬意を表したい。

最優秀賞(経済産業大臣賞)

オークマ ものづくりDXを実現する新世代CNC OSP-P500

工作機械用のコンピューター数値制御(CNC)装置で、加工時間の見積もりを実加工時間の1000分の1、誤差1%以下の高速・高精度で可能にするなどデジタルツインの機能を搭載。正確な加工時間見積もりで加工スケジュールの策定や迅速で正確な納期、コスト見積もりに寄与する。加工動作作成から段取り、加工、検査まで、一連の作業を図面情報の入力をするだけででき、加工用のプログラム言語を知らない初心者でも簡単に扱える。

牧野フライス製作所 5軸制御横形マシニングセンタ a900Z

部品形状の複雑化や多種多様な部品加工に対応し、高速動作と高い切削能力を持つ。生産性を追求しつつ経済性と環境に配慮した機構も取り入れた。軽量高剛性のテーブル構造で重心を傾斜軸に近づけ、無駄のない高速動作を実現。堅固な機械構造と高剛性のB/C軸テーブルにより、従来の4軸横型MCに比べて切削能力を40%高めた。切りくず処理にも高い信頼性を確保し、デザイン面は優雅さとユーザーフレンドリーを兼ね備えたデザインを目指している。

日本力(にっぽんぶらんど)賞

アマダ/アマダマシナリー 鉄骨・鋼材加工向けファイバーレーザマシン LC-VALSTER-6225AJ+AS-6225

鋼材向けファイバーレーザー加工機として、新開発のビーム可変技術と長焦点レンズを採用。各種厚板の加工に最適な調整ができる。可動部の軽量化による位置決め精度の高精度化なども実現した。開閉するパーテーションは上面と正面のL型扉構造で2面をフルオープン化したことで、材料搬入や取り出し作業を効率化できる。

ソディック リニアモータ駆動 高速・高性能ワイヤ放電加工機 AL600G 「i Groovei Groove+ Edition」

ワイヤを緩やかに回転させて送る独自機構により、均一で高品質な加工面が得られる。ワイヤ電極の全周を有効活用し、仕上げ加工領域でのワイヤ消費量を従来比最大30%削減できる。また新開発の放電加工制御技術を採用して加工速度と加工品質を高めたほか、セラミックスを各部に使って熱変位を抑える構造に仕上げた。

日本商工会議所会頭賞

キャニコム 法面45度対応除草作業機 アラフォー傾子 CG271

鉄道沿線や高速道路の、のり面などでの使用に特化した小型ラジコン式の草刈り機。傾斜での使用のために部品構成は重心を低くし、高さを抑えて設計した。エンジンの自動チルトやクローラーのスライド機構を採用し、最大傾斜45度でも安定して草刈りができる。ボンネットは開口面積が広くなる形状でメンテナンスがしやすい。

パルステック工業 X線単結晶方位測定装置 s-Laue

空冷のエックス線(X線)発生装置と高感度検出器が一体となった卓上型の省スペースな測定機。単結晶にX線を照射し、回折した際の画像「ラウエ斑点」を高速で取得できる。X線を垂直下向きに入射するため試料の設置が簡単で、顕微鏡を用いて精密な位置合わせが可能。用途は主面方位の測定、半導体デバイス開発など。

日本産業機械工業会賞

コベルコ建機 クローラクレーン Mastertech 7200G NEO

本体からウインチをなくして本体輸送重量を軽量化するとともに、アタッチメントの一体輸送と一体組み立てを実現することで輸送性と組み立て性を大幅に向上。従来からのコンパクトボディーを継承しつつ、吊り上げ能力はタワー仕様で従来機比25%、クレーン仕様は同10%それぞれアップ。運転席も快適性を追求している。

日本工作機械工業会賞

中村留精密工業 ATC型複合加工機 JX-200

世界最小級の工具主軸を搭載した、自動工具交換装置(ATC)型複合加工機「JX―200」は、工具収納本数を80本に増加し1台でさまざまな加工・工法を行え、多様な素材の加工対象物に対する長時間の安定した多品種少量生産を実現。また機械内部の新コラムやフレーム構造、外観について、デザインの仕立てにこだわった。

日本電機工業会賞

三菱重工業 小型CO2回収装置「CO2MPACT」

三菱重工業はプラントの設計・調達・建設(EPC)ノウハウを生かし、顧客の肥料などのプラントにアミン吸収液を活用した二酸化炭素(CO2)回収プラントを併設してきた。設計を標準化し、コンテナ輸送できる小型装置を開発した。1日の回収量0・3―200トンの5モデルを用意し、低コスト・短納期で導入できる。

日本ロボット工業会賞

イシダ マッチング計量機 GCW-V

従来の組み合わせ計量機では機械に付着しやすく搬送が困難だった、麺類などの不定形な食品を自動計量する。人の手に代わるロボットハンドは、ツメ6本を同時に回転させ開閉動作で食品をつかむ。ハンド16本1セットを装置内に2セット設置。各セット交互に計量することで生産性も向上。清掃しやすい機構で作業負担も減らす。

日本デザイン振興会賞

キヤノン 商業印刷向けカラープロダクションプリンター imagePRESS V1350

印刷物の短納期化に寄与する高速印刷と高耐久部材による高い堅牢性を両立した。毎分135枚(A4ヨコ)の高速印刷により印刷物の短納期化を実現。また長時間の連続印刷への耐久性と印刷品位の安定性を備える。高剛性フレームに加え、駆動系部品には高耐久部材を用いるなど印刷耐久枚数を従来機種の2倍以上に高めた。

日本デザイン学会賞

ナガセインテグレックス 高精度門型平面研削盤 SGX-126・168B(S)L2D-Neo3

機械全体を3点で支える新構造で床面の凹凸や機械の経年変化の影響を受けにくい。従来機比で機械剛性(静剛性)が2倍、振動のしにくさ(動剛性)が同1・25倍。普及機並みの価格ながら高級機に近い超高精度で、各軸の速度を1・2―3倍にし高効率も追求した。幅4500ミリ×奥行き2160ミリメートルと設置面積を半減した。

審査委員会特別賞

旭サナック デュアル電界方式粉体ハンドガンユニット:EcoDual

二重の電界を形成することで粉体塗料の使用量削減と仕上がり性向上を両立させる。塗着効率は同社従来製品比10%向上。電界調節機能により表面凹凸の原因となる静電反発を抑制し、塗膜の平滑性を保つ。吐出量調整はガンの手元スイッチで調節できる。ユニットは粉体塗料の種類別に3タイプ用意した。

岡本工作機械製作所 CNC精密平面研削盤 PSG126CA-iQ

未来の研削盤をコンセプトに、3次元(3D)フレーム解析によって基本構造から再設計した。制御盤一体型・油圧レス構造を採用し、従来機に比べて占有面積22%削減、使用油量半減を実現した。操作盤は移動式とし、可搬手パハンドルを搭載。これらにより大型ワークへの接近性・操作性などを向上した。

ツガミ ターニングセンタ SS20MH-Ⅲ-5AX

主軸移動型自動旋盤とマシニングセンター(MC)の機能を集約したターニングセンター。独自構造でコンパクトにし、従来の常識を覆す。工程集約と高加工安定性で歩留まりを向上する。省エネルギー化や省人化をサポートするソフトウエアを搭載し、国連の持続可能な開発目標(SDGs)にも貢献する。

ニデックマシンツール 切削面取盤 CF26A

歯車を高精度に仕上げるために面取り部(角部)を切削で除去する装置。専用の面取り工具を用いて歯車と工具を同期回転させる創成加工を行い、効率よく面取りできる。一般的な工法で課題だった2次バリが発生せず、面品位を高められる。歯底部分の加工や1ミリメートル以上の大きな面取り幅にも対応する。

ブラザー工業 ユニバーサルコンパクトマシニングセンタ SPEEDIO U500Xd1

5軸の割り出し加工が可能な小型マシニングセンター(MC)。治具エリアが最大限に広くなるよう設計した直径500ミリメートルの傾斜ロータリーテーブルを標準搭載し、従来モデルより大きな加工対象物を扱える。これにより電気自動車(EV)で多用する大型のアルミニウム部品を加工しやすくした。

ホーコス 超音波加工機 NSU20

ガラスやセラミックス、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)など堅くてもろい脆性材を加工する新ジャンルの機械。特有のベッドレス構造で、機械の下部が細くすっきりとしたデザイン。摺動(しゅうどう)部品が加工室の上部にあるためスラッジによる不具合を防ぐ。超音波発振子を主軸に内蔵し高出力加工が可能に。

(2023/7/20 05:00)

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