ロボットと働く/小林製薬 小型協働型で作業合理化

(2023/8/1 05:00)

重量制限に独自ハンドで対応

小林製薬の製造子会社、仙台小林製薬(宮城県大和町)では小型のアームを持つ協働ロボットが活躍している。力が制限されており、何かにぶつかったら停止するなど安全性の高さが特徴。産業用ロボットで必要な柵が協働ロボットでは不要だが、速度や持てる重量に制限がある。仙台小林製薬業務グループの奥田正浩グループ長は「大型の協働ロボット導入の経験はあったが、制限が増える小型協働ロボットの導入は挑戦だった」と話す。(編集委員・安藤光恵)

  • 複数台のロボットが同時に働く

蓄膿(ちくのう)症向けの「チクナイン鼻洗浄器」と鼻炎など向けの「ハナノアデカシャワー」の2種類の鼻洗浄用製品のラインに、デンソーウェーブ(愛知県阿久比町)製の協働ロボット「COBOTTA(コボッタ)」を導入した。従来は手作業だった、小箱へのシール貼り付けや、製品を反転させ計量器へ送る作業をロボットに置き換えた。奥田グループ長は「合理化したいラインだった」と現場を分析する。

手作業で確立した作業をいかに自動化するかを検討した結果、同ロボットの導入を決めた。イニシャルコストの抑制や限られたスペースなど、さまざまな条件をクリアできたのが同ロボットだった。少量多品種生産のため特定の製品の製造に特化した設備は導入しにくいが、動作に汎用性があるのも決め手となった。

同ロボットの導入は生産性倍増計画の一環として、コストダウンと生産性向上を目指して進められた。労働人口の減少から夜間や休日を含む24時間フル稼働は年々難しくなっており、将来さらに労働力の確保が困難になる。製造現場の合理化計画が求められる中、「ラインの無人化を実現するため『ロボット同士のシンクロ技術』が目標となった」(奥田グループ長)。複数のロボットが同時に動く想定で協働ロボットが最善と判断した。

  • 協働ロボットを導入した仙台小林製薬

協働ロボット以外では、複数人が担っていた作業を自動化するには大掛かりになり、イニシャルコストも膨大になる。さらに協働ロボットは「人とロボットが一緒に作業可能なため自動化が段階的にできる」(同)のも利点だ。単純作業の自動化は進んでいるが、協働ロボットの導入でより複雑な工程も自動化が見えてきた。

ただ、コボッタは自身の手先を含め500グラムを持ち上げるのが限界。扱う製品は鼻洗浄器でも103グラム、デカシャワーは420グラムとロボットにとってかなりの重さだ。そこで独自の吸着型ハンドを設計し、わずか63グラムの軽量の手先で製品を扱えるようにした。ハンドは自社の3Dプリンターを使い低コストで作製した。

プログラムは腕の動きを最短にして効率的な動作ができるように工夫。動きに伴う加速度の負荷も考えた。複数台が同時に働けるようロボット同士の干渉に配慮。2022年秋に稼働にこぎ着けた。

奥田グループ長は「想定通りの工数削減ができ、コストの利点が出てきている」と手応えを感じる。将来は無人搬送車(AGV)での移動による作業場所の変更や、人工知能(AI)、IoT(モノのインターネット)との連動も視野に入れる。

(2023/8/1 05:00)

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