(2023/8/8 05:00)
人材は付加価値業務に
人手不足は物流現場においても大きな課題だ。作業員の確保だけでなく、生産性の向上も求められている中、現場ではロボットの導入が進む。安田倉庫では、6月に実際の倉庫現場にラピュタロボティクス(東京都江東区)の自動フォークリフトを試験導入した。省人化などを通じ、人材をより付加価値の高い業務に優先的に振り分け、顧客への提案力を強化していくことが狙いだ。(編集委員・小川淳)
導入したのは安田倉庫の東雲営業所(東京都江東区)。近年、同社はメディカル物流を強化しており、同営業所は医療機器の取り扱いで通常の倉庫・物流機能に加え、機器の検査や洗浄・廃棄、修理などのサービスも実施している拠点となる。
ラピュタの自動フォークリフトは、ロボットが自己位置を確認するための反射板や磁石を必要とせず、既存倉庫への導入が業界最短で可能という。高性能センサーのLiDAR(ライダー)や自社開発のロボットソフトウエア、ロボット群制御の人工知能(AI)で稼働する。
導入の背景として、安田倉庫営業企画部の新井康一DX事業推進室長は「大きな理由はフォークリフトの作業員の新規雇用など、将来的な労働力不足への対応のため」と説明する。中でも同営業所周辺では同業他社との競合もある中、人手を集めるのに苦労しているという。また、採用コストの増加も課題となっていた。
実際の現場では、自動フォークリフトを上下階に2台導入し、垂直搬送機への荷物の搬送と、搬送機から取り出して仮置き場に置く作業の定点間の搬送に特化して作業している。
人間がフォークリフトを操作するようなレベルで動くことはまだ難しいものの、「定点間の搬送だとか、ある程度ボリュームのある作業なら代替できる」(DX事業推進室の鈴木貴之チーフ)と判断した。
導入による生産性の向上は今後の課題となるが、人手不足や作業員自体が減少していく中、こうした限定的な使い方なら、ベテランの作業員と同等の働きをすることができるのは大きなメリットとなる。
安田倉庫ではメディカル物流は今後も堅調に伸びるとみており、拠点の整備を進めている。一方で、従来は物流業務とは見なされていなかった医療機器の検査や洗浄、修理など付加価値の高いサービスの提供も求められている。
新井室長は「お客さまからのご依頼は多種多様で、一律に自動化ができない部分もある。一般的な保管などで関わる定点間の搬送とか決められた行動に関しては、どんどん自動化や省力化を進めていければいい」と考えているという。
その上で「既存の物流にとらわれないような付加価値の高い業態に関しては、もっと人を投入してサービスを拡充させたい」と展望する。
現在、試験導入期間は終了しており、今後本格的な導入を目指し、ラピュタと協議をしていく。
(2023/8/8 05:00)