(2023/8/22 05:00)
最終検査工程での活用も
東京濾器(横浜市都筑区、岩本高明社長)の相模第1工場(相模原市中央区)は、主に商用車向け排ガス浄化マフラー(触媒コンバーター)を製造する。溶接ロボットのほか、圧入など各工程での加工対象物(ワーク)搬送にもロボットを活用。近年はタクトタイム短縮のため、作業ブース間を移動するロボットなど新たな試みも取り入れている。生産効率向上や作業者の負担軽減、省人化、品質向上といったさまざまな課題の解決にロボットを生かす。(増田晴香)
圧入工程では、触媒担体に手作業で保持用のマットを巻き付け、それをマフラーの外殻となる「シェル」の内部に圧入固定する。ここではロボットを8ライン中4ラインに導入しており、ワークの圧入工程への供給や、圧入後の払い出しといった搬送を担っている。
相模第1工場は商用車の中でも大型向けの製品を多く手がけており、触媒担体の重量は15キロ―20キログラムになるものもある。作業者の重労働の軽減を考慮する目的でもロボット化・自動化を進めてきた。一方、圧入する際の位置調整などが難しい形状の製品もあり、人手で行う方が効率的なラインもある。
生産効率向上の取り組みとしては、手待ち時間を削減できるロボットを約3年前に導入した。二つの溶接ブースにそれぞれ1台ずつロボットを配し、ブース間をロボットがレールで移動できるようにした。各ブースの製品で溶接長が異なる場合、先に作業が終わった方のロボットがもう一方のブースに移動し、作業を支援する。
相沢勇人工場長は「ロボットを導入しているところでは手待ちも発生しがち。作業を平準化しタクトタイム短縮につなげる」と背景を説明する。現状、20―30%程度のタクトタイム削減効果が出ているという。
同工場は1997年の稼働当初から溶接ロボットを導入している。本溶接では全ラインにロボットを配しているほか、現在は仮付け溶接のロボット化も試行中だ。
仮付けをはじめ、ロボット導入時の難点は「これまで人が対応してきた部品の形状バラつきをロボットが吸収できない」(相沢工場長)こと。板金部品のため精度に多少のバラつきが出てしまい、設備が停止したりそのまま加工したりすると不良が出てしまう。これに対し、センシングによる位置補正や、前工程での部品精度向上などで改善を図る。
こうしたハードルや、少量多品種生産の難しさもある中、「さまざまなロボットの使い方を試している」(同)という。例えばスポット溶接などでは、製品ごとに溶接の打点位置や軌跡などをロボットにティーチングしておけば、各製品の形状に合わせた専用治具を使う必要がなくなる。設備の汎用性が高まり省スペース・省コスト化に貢献する。
9月以降、最終検査工程にロボットを導入し検証を開始する予定だ。外観を検査するカメラと、寸法検査を行うプローブを1台のロボットが都度持ち替える。当面は本格稼働に向け課題を抽出する。
(2023/8/22 05:00)