産業春秋／そごう・西武の売却が示唆するもの

幼かった昭和４０年代、東武東上線の沿線に住んでいたため、両親に連れられて東上線で東京・池袋の東武百貨店と西武百貨店（現そごう・西武の西武池袋本店）に出かけるのが楽しみの一つだった。ブレザーなどを着て、身なりを気にして出かけたのを懐かしく思い出す。

そのそごう・西武が１日、米投資ファンドに売却された。そごう・西武は多額の有利子負債を抱えて成長投資に動けず、このままではジリ貧から抜け出せない。売却した方がむしろ雇用を維持できるとセブン＆アイ・ホールディングス（ＨＤ）は判断したようだ。

そごう・西武の労働組合が、業界として６１年ぶりのストライキを決行したその日に売却が決議された。売却後の百貨店事業や雇用がどこまで維持されるのか、組合員への丁寧な説明を欠いたのは残念だった。

米投資ファンドのパートナー、ヨドバシＨＤは西武池袋本店などの不動産を取得し、１年後にも出店する。縮小される百貨店売り場に面影は残っているだろうか。

少子化やデフレ、販売チャネルの多様化を受け、百貨店の経営環境は厳しい。そごう・西武が形を変えてどう再生されていくのか、今後の百貨店業界に何を示唆するのかを見守りたい。