(2023/9/26 05:00)
AGV・IoT活用 コスト競争力最大化
パナソニックエレクトリックワークス(EW)インド(ムンバイ)は、コンセントやスイッチなど配線器具の徹底した自動生産をスリシティ工場(アンドラ・プラデーシュ州)で進める。インドは低所得者層の人件費が日本の約10分の1と安価だが、スリシティ工場は量産品を自動生産しコスト競争力を最大化する。多品種少量品はインドの他工場で技能者が組み立てている。広大で労働力が豊富なインドは生産形態の自由度も高い。(大阪・田井茂)
2022年4月に稼働したスリシティ工場は至るところで無人搬送車(AGV)や搬送ロボットが稼働する。巨大な自動倉庫も設置され、金型の保守などを除き多くの工程が無人。部品の金属・樹脂加工から組み立て、耐久性を調べる品質評価などを自動化した。
配線器具の年産能力は1億2000万個に上る。パナソニックEWインドの小林健太郎製造担当責任者は「自動化は90%以上。従業員300人のうち自動機の保守を10人と多めに割いた」と説明する。多品種少量品を手組みするハリドワール工場(ウッタラーカンド州)は従業員4800人なので、いかに省人化が進んでいるか分かる。
人口が世界一で中間層や所得も急増するインドでは、標準品を低コストで大量生産しシェアを取るのが圧倒的に有利。パナソニックホールディングス(HD)傘下のパナソニックEW社は、スリシティをはじめインド3工場で配線器具を量産し、同国シェアを首位の約40%に伸ばした。
日本と同様にインドでもトップを握れた背景には、配線器具のマザー工場である津工場(津市)から長年続けてきた支援がある。スリシティ工場は津工場の高速型をはじめ組み立て機20台を導入した。自動機の保守や金型では日本から技術者を送り込み、現地従業員を養成する。小林責任者は「工場の立ち上げ当初はコロナ禍で直接支援できなかった。しかしオンラインでつなぎサポートすると、ローカルの人材だけでやり遂げた」と、現地の技能向上を指摘する。
単に生産を自動化するだけでなく、IoT(モノのインターネット)による生産効率化でも先行する。設備ごとにデータ収集し稼働を監視・分析するほか、在庫情報などと一元管理し、生産の全体最適化を図っている。インドでは巨大な工場用地や優れた人材を確保できるため、AGVやIoTなどによる大胆な無人生産の実験が可能という。自動倉庫もビルのように大きい。約1万箱の収容能力を備え、管理システムと連動する。「日本の狭い工場ではできない自動化に挑戦できる。IoTによる可視化や全体最適化の技術成果は、日本に『逆輸出』できる」(小林責任者)。
自動生産は半面、大量に作らないと製造単価を下げられない。このため、ハリドワール工場の生産量が比較的多い手組み製品についてはスリシティ工場に移管し、自動化も試みて稼働率を高める。自動生産は一般に人為ミスを減らし安定する特性があるため、製品の品質向上も見込める。
(2023/9/26 05:00)