社説/イスラエルの地上侵攻 国際人道法守り過剰防衛回避を

(2023/10/17 05:00)

中東情勢が一段と緊迫化している。イスラエルはパレスチナ自治区ガザ地区への地上侵攻の準備を完了したと発表。ただガザ北部住民の南部への退避は遅々とし、北部で重大な犠牲が生じかねない。先進7カ国(G7)はイスラエル支持を表明しつつも、国連や欧州連合(EU)はイスラエルによるガザ地区の完全封鎖と短時間での退避勧告を批判する。イスラエルには慎重な対応が求められる一方、国際社会はウクライナ情勢からも目を離せない難局を迎えた。

ガザ北部の110万人のうち退避済みは半数とされる。退避しても南部で住居や水、食料、医療の十分な確保は困難だ。

G7はイスラム組織ハマスに奇襲されたイスラエルを支持する。民間人を虐殺し人質にも取るハマスの蛮行は断じて許されない。だがイスラエルの対応が過剰防衛となる可能性が、中国に言われるまでもなくEUで懸念されている点に留意したい。

EUは短時間での退避は非現実的だとイスラエルを批判。EU加盟27カ国首脳は15日、イスラエルの防衛権利を支持しつつガザ市民の今後に強い懸念を示した。国連はハマスによる無条件の人質解放と、イスラエルが無制限に人道支援物資の搬入を認めるよう求める。イスラエルとハマスは国連の求めに応じ、中東情勢の一段の緊迫化を回避することが求められる。

2021年のイスラエルとハマスの紛争では、エジプトの仲介案を両国が受け入れた。エジプトの対応にも期待したい。

中国はイラン、サウジアラビアの外相と相次ぎ電話会談し、イスラエルの過剰防衛を批判。ロシアは国連安全保障理事会に即時停戦決議案を提出した。イスラエルの地上侵攻を抑止できない米国の責任を問いたい思惑が透ける。国際社会の視線がウクライナから中東に移ればロシアを利することにもなり、国際社会はウクライナへの継続的な支援でも結束を新たにしたい。

バイデン米大統領がイスラエル訪問を検討中とされる。イスラエルに国際人道法の順守を求め、中東情勢が世界経済に及ぼす影響を最小限にとどめたい。

(2023/10/17 05:00)

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