(2023/10/26 12:00)
東急電鉄は住友商事と連携し、ローカル5G(第5世代通信)と人工知能(AI)を使い、鉄道の線路設備に異常がないかを確認する巡視業務の効率化に取り組んでいる。走行中の電車から撮影した映像をAIが解析して異常を見つけ、毎日線路を数時間歩く現在の徒歩巡視よりもかかる時間を大幅に減らす。他の鉄道会社とも協力し、都市鉄道でも地方でも使える仕組みを目指す。
線路の異常はレールの傷やトンネルの水漏れ、樹木による信号機の隠れ、踏切の遮断管のずれなど、さまざまな項目がある。レール下の砂利の白色化もその一つで、「レールが上下に沈み込んでいる場所で、乗り心地が悪い」(鉄道事業本部技術戦略部イノベーション推進課の佐々木健之氏)という。
開発中の技術は、AIが事前に異常のある画像を学習することで、撮影映像からも同じ特徴を見つけて異常を検知するというもの。係員は該当箇所だけを現地確認する。検知の精度を上げるには、より多くの画像を学習することがカギだ。
東急電鉄と住友商事は2021年度から共同開発を始めた。1項目当たり約500枚の画像を学習し、異常を検知する精度60%を達成。22年度は画像の反転や明るさの変更などでかさ増しして学習量を増やし、精度83%に向上した。23年度は90%以上を目指す。「参加する鉄道会社が増え、データも増える」(同)と期待する。
22年度から参加する横浜高速鉄道に加え、23年度から名古屋市交通局、JR九州、西日本鉄道、伊豆急行が実証に参加する。
画像解析には、運転席から正面と上方向、下方向の3方向を撮影したカメラ映像を使う。大量のデータを解析用サーバーに送るために欠かせないのがローカル5Gだ。東急電鉄は実証のため自由が丘駅と横浜駅に5Gアンテナを設置しており、1分弱の短い停車時間の間に、それまでに撮影した約10分間の映像3本を電車からアンテナに伝送している。
一方、都市と地方には、車両改造の予算や部品の交換頻度などに違いがある。そこで23年度の実証実験では3方向のカメラと記録を一体化した可搬の小型装置を投入し、車両改造なしで運転席に置いて使えるようにする。また注意報を出すレベルの調整などで、各社の事情に合わせた運用を検討する。
東急東横線では24年度に開発技術を実装する計画だ。鉄道業界の人手不足をにらみ、他社と連携して幅広く使える技術を目指す。
(2023/10/26 12:00)
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