社説/日銀のジレンマ 金利高と円安、政策対応を注視

(2023/10/30 05:00)

日銀は30、31の両日に金融政策決定会合を開く。長期金利の上昇圧力が強まる中、イールドカーブ・コントロール(長短金利操作、YCC)を修正し、長期金利の上限を引き上げるかが焦点になる。金利の引き上げ容認は行き過ぎた円安を是正し、輸入物価の上昇を抑制する効果を期待できる。ただ中東情勢をはじめ世界経済の先行きが不透明な中、企業の資金調達などに影響が及ぶ利上げが適切かは判断が難しい。植田和男日銀総裁には慎重な決断が求められる。

日銀は7月にYCCを修正し、許容する長期金利の上限を0・5%程度から1%に引き上げている。だが米国の長期金利上昇につられて日本の金利も上昇し、先週末の新発10年物国債の利回りは0・88%前後と1%に迫った。国内の長期金利が上昇を続ければ、日銀は1%を超えないよう国債を購入し続け、市場機能を歪める。日銀が今回の会合でYCCを修正するとの市場観測も、長期金利の上昇を促している点にも留意したい。

日銀は悩ましい判断を迫られる。YCCを修正せず、金利の上昇を抑え続ければ日米金利差が市場で意識され、為替相場は円安に傾き、「悪い物価上昇」を招く。YCCを修正し、金利の上昇を容認すれば円安是正を期待できるが、経済を減速させかねない。日銀は政策判断でジレンマに直面している。

米国の長期金利の上昇は、世界で独り勝ちとされる堅調な米国経済に起因する。7―9月期の実質成長率は年率4・9%と大幅に伸び、政策金利の誘導目標が5・25―5・5%の高水準にあって個人消費が前期比4・0%増と力強い。市場では高水準の政策金利が長期化しても米国経済は軟着陸できると判断し、先週末の長期金利は5%をうかがう4・8%台で推移した。

米連邦準備制度理事会(FRB)は31日からの会合では政策金利を据え置く見通しだ。だが堅調な経済が物価を上昇させる可能性があり、12月会合で追加利上げを決めるとの見方も市場にある。日銀は円安の進行を警戒しつつ、金融政策の正常化を慎重に模索してもらいたい。

(2023/10/30 05:00)

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