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(2023/11/7 05:00)
世界最大のロボット見本市「2023国際ロボット展」が29日に開幕する。生産性向上や労働力不足の解決に向けロボット活用の機運が盛り上がる中、メーカー各社が課題解決につながる最新技術を訴求する。本連載ではロボット業界の先行きやロボット事業の戦略などを関係者に聞く。初回は同展を主催する日本ロボット工業会会長(ファナック社長)の山口賢治氏。
最新技術で社会課題解決
―2023国際ロボット展が開幕します。
「過去最大規模の開催となり、国内外の出展者が集結する。各種の展示や企画を通じて導入意欲を喚起し、ロボット利用分野の拡大につなげたい。ロボット業界の将来を担う人材を惹き付ける場としても期待している」
―足元の産業用ロボットの受注状況には弱さが見られます。
「世界的なインフレや高金利、地政学的問題など複数要素が重なり設備投資に対する様子見が強まっている。特に産業用ロボットの約半数の需要を占める中国の景況感が悪く落ち込みが顕著だ。調整局面がもう少し早く終わる予想もあったが、長引く可能性がある」
―中長期的視点ではロボット業界の成長は確実視されています。
「今は踊り場にある電気自動車(EV)や半導体関連の投資もいずれ戻るだろう。国内に限らず、少子高齢化に伴う労働力不足の問題も世界で起こりうるためロボットのニーズは増えていく。協働ロボットの登場によって自動化の敷居が下がったことでロボットへの興味も高まっている」
―ロボットの利用シーンに変化は。
「従来のロボットは製造業中心だったが、農業や建設業、サービス業でもロボットへの期待が高まっている。ただ未導入領域は既存技術では対応が難しい面があり、新たな技術開発が必要だ。その際、エンドユーザーやシステムインテグレーター(SIer)、研究機関との産産学連携のほか、ベンチャーを含むオープンイノベーションにより、新規の技術開発と社会実装を進めることが重要だ」
―自動車業界のEVシフトがもたらすロボット業界への影響は。
「一つに、必要なロボットが変わる側面が考えられる。例えばエンジン部品に比べてバッテリー関係はロボットの活用度合いが高まる。最終組み立てなど従来はロボット導入が進んでいなかった領域でも適用する動きが広がりつつある。特定用途での需要は減る可能性があるが、リスクではなく、大きな機会として前向きに捉えるべきだ。仮にロボット業界が最適な生産システムを新たに提案できれば大きな機会となる」
―ロボットが未来社会に果たせる役割は。
「ロボット技術は社会課題を解決する課題解決型技術として政府から期待されている。国際ロボット連盟は国連の持続可能な開発目標(SDGs)の17ゴール達成にも直接的あるいは間接的に貢献できるとしている。ロボット技術はグローバルな課題に対しても果たせる役割が大きい」(増重直樹)
*取材はオンラインで実施。写真は23年6月に撮影したものを使用
(2023/11/7 05:00)