(2023/11/20 05:00)
1年ぶりとなる日中首脳会談が17日(日本時間)に米サンフランシスコで開かれた。「建設的かつ安定的な日中関係」の構築に向け、首相を含むあらゆるレベルで緊密な意思疎通を重ねることで一致した。ただ対話の継続により、日本産水産物の輸入禁止措置が解除され、中国での安全なビジネス環境が担保されるかは不透明感を拭えない。中でも後者は日本企業の中国離れを助長しかねず、中国政府には適切な対応を求めたい。
両首脳は、日中が共通の利益を拡大する「戦略的互恵関係」を推進することを再確認した上で、日中間の意見の隔たりを協議する対話を継続することで合意した。2019年を最後に中断していた「日中ハイレベル経済対話」も適切な時期に開き、気候変動問題などでも協力を模索する。意思疎通を密にし、冷え込んだ日中関係が改善に向かう契機になると期待したい。
ただ各論では、岸田文雄首相が習近平国家主席に懸念を伝えるのにとどまり、具体的な進展がなかったのは残念だ。岸田首相は東シナ海情勢への深刻な懸念を伝えたほか、「処理水」の海洋放出に伴う日本産水産物の輸入禁止措置の即時撤廃、反スパイ法違反で逮捕された日本企業関係者の早期解放を求めた。だが習氏は言及を避け、課題を先送りしたようにも映る。
日本企業の懸念の一つが反スパイ法だ。中国でのビジネス環境を脅かす。どのような行為が違法かが不明で、スパイの定義には「その他のスパイ行為」との曖昧な表現も明記される。透明性ある法運用なしに、互恵関係の構築はおぼつかない。
23年版「通商白書」によると日本企業が最も重視する投資先が中国から東南アジア諸国連合(ASEAN)にシフトした。直近10年間は中国が首位だが、今後5年間ではASEANが首位に躍り出た。経済安全保障上のリスクがある中国依存を軽減する狙いだ。この経済安保に加え、反スパイ法が7月に改正され、取り締まりがさらに厳しくなった。中国との対話継続により事態は改善されるのか、日本企業は行方を注視したい。
(2023/11/20 05:00)
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