社説/24年度法人減税(上)重要5分野の「国内」増産加速を

(2023/11/22 05:00)

自民、公明両党の税制調査会は17日にそれぞれ総会を開き、2024年度税制改正に向けた本格的な議論が始まった。産業界が注目する改正案の一つが、半導体など重要物質の国内生産を促す法人減税の創設だ。増産すれば税額控除を受けられ、経済安全保障や脱炭素を後押しする効果を期待できる。ただ減税で目減りする税収を補う新たな財源が必要になる。財政規律にも目配りし、国内生産投資を促す効果的な新税に仕上げたい。

政府が創設を表明した「戦略分野国内生産促進税制」は、重要物質の生産・販売量に応じて法人税を減税する。経済産業省が自民党に示した要望案によると、生産開始から10年間にわたり、最大50%まで税額控除を可能とするよう求めた。これまでの研究開発や初期投資への支援とは異なり、中長期の国内生産活動を後押しする。重要物質の「国内」生産を増やすことで経済安保を確保し、電気自動車(EV)や蓄電池などの増産で脱炭素化が進むと期待したい。

経産省は5分野を戦略分野と位置付け、法人減税の対象とすることを想定する。「EV・蓄電池」「半導体」「グリーンスチール(製造時に二酸化炭素などの排出量を抑えた鋼材)」「グリーンケミカル(再生可能な資源などから製造した化学製品)」「持続可能な航空燃料」の5分野だ。与党税制調査会は年末の24年度税制改正大綱の策定に向け、減税の対象となる製品や適用期間などを詰める。

日本経済がデフレから脱却するには、小手先の所得減税などではおぼつかない。「成長型経済」への転換が必須であり、成長投資を促す今回の法人減税に踏み込むことで、日本の低い成長率を高める契機としたい。

ただ財政規律への配慮も求められる。経産省の法人減税は22年8月に成立した米国のインフレ抑制法を参考にした。米国は気候変動対策への大規模な投資を促す一方、年間利益10億ドル(約1500億円)超の大企業への課税を強化している。与党税制調査会は税収中立(増減税同額)も視野に入れ、法人減税の最適解を導き出してほしい。

(2023/11/22 05:00)

総合2のニュース一覧

おすすめコンテンツ

「現場のプロ」×「DXリーダー」を育てる 決定版 学び直しのカイゼン全書

「現場のプロ」×「DXリーダー」を育てる 決定版 学び直しのカイゼン全書

2025年度版 技術士第二次試験「建設部門」<必須科目>論文対策キーワード

2025年度版 技術士第二次試験「建設部門」<必須科目>論文対策キーワード

技術士第二次試験「総合技術監理部門」択一式問題150選&論文試験対策 第3版

技術士第二次試験「総合技術監理部門」択一式問題150選&論文試験対策 第3版

GD&T(幾何公差設計法)活用術

GD&T(幾何公差設計法)活用術

NCプログラムの基礎〜マシニングセンタ編 上巻

NCプログラムの基礎〜マシニングセンタ編 上巻

金属加工シリーズ 研削加工の基礎 上巻

金属加工シリーズ 研削加工の基礎 上巻

Journagram→ Journagramとは

ご存知ですか?記事のご利用について

カレンダーから探す

閲覧ランキング
  • 今日
  • 今週

ソーシャルメディア

電子版からのお知らせ

日刊工業新聞社トピックス

セミナースケジュール

イベントスケジュール

もっと見る

PR

おすすめの本・雑誌・DVD

ニュースイッチ

企業リリース Powered by PR TIMES

大規模自然災害時の臨時ID発行はこちら

日刊工業新聞社関連サイト・サービス

マイクリップ機能は会員限定サービスです。

有料購読会員は最大300件の記事を保存することができます。

ログイン