(2023/12/6 05:00)
欧州連合(EU)のAI規制法案がここにきて先行き不透明になってきたのが気がかりだ。世界初の罰金付きの包括的な人工知能(AI)規制を目指すものの、フランスやドイツ、イタリアが反対を表明。厳しい規制により、EUの競争力や技術開発が低下することを懸念する。EUにAIシステム・サービスを提供する日本企業は、EUの協議の行方を注視したい。
EUはAI規制法案の年内合意を目指している。ただ生成AIの基盤モデル(ユーザー数が4500万以上)への規制案にフランスなどが反発し、年内合意が困難視される。7月にはEUの約150の関連企業が同法案に反対を表明。取引先がEU域外に活動領域を移しかねないと強い懸念を示していた。EUはAI開発で先行する米国との差を埋めたい思惑もあり、AIの開発と規制をいかにバランスさせるかが今後の焦点となる。
同法案はAIリスクを4分類し、リスクに応じて規制する。生命や基本的人権を脅かすリスクがあれば使用を禁止し、雇用や教育の評価などに使う場合などは認証取得を求める。違反すれば巨額の罰金を科す。欧州議会と欧州理事会、欧州委員会の代表者らは6日(現地時間)に最終協議に臨む予定だ。AI規制法の成立には3者の合意が必要であり、行方に注目したい。
米政府は7月、オープンAIやグーグル、マイクロソフトなど米IT7社との間で、AIの安全性と透明性を高める自主規制ルールを導入することで合意した。10月に公表された大統領令は、安全性に対する新基準などに法的拘束力を持たせたものの、基本的にはAI開発の推進に軸足を置いており、EUとは対照的なスタンスと言える。
日本は年末に生成AIの国内向けガイドラインをまとめる。事業者への罰則などは設けず、AI開発と利用を加速させる方向だ。先進7カ国(G7)が1日にまとめた生成AIに関する国際ルールは議長国・日本が主導しており、これに基づくことになる。偽情報の拡散や人権侵害対応で実効性を担保し、出遅れたAI開発で巻き返したい。
(2023/12/6 05:00)
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