(2024/1/19 12:00)
宇宙への滞在は現在は特殊な訓練を重ねた宇宙飛行士に限られているが、今後有人宇宙活動が拡大し、多くの人が宇宙へ行く未来が訪れそうだ。小林製薬は宇宙航空研究開発機構(JAXA)や日本パーカライジングと宇宙船内などへ抗菌加工する技術について共同研究を行った。長期的な宇宙滞在は免疫力の低下につながる。宇宙で人が活動する空間の感染症予防に向けた取り組みで、有人宇宙活動が増えると必要な技術になりそうだ。
2020年から23年3月まで共同研究を行った。小林製薬はBツーB(企業間)商品で、繊維製品などに使用される持続性抗菌剤「コバガード」の開発や販売をしており、衛生環境を保つ技術を保有していた。JAXAから将来の有人宇宙活動で必要となる技術ギャップのリストについて、意見募集要請をしていることを紹介を受け、衛生環境というテーマであれば何かできるのではないかと考えた。
共同研究に関わった中央研究所(大阪府茨木市)の唐澤慧記氏は「小林製薬は宇宙に対する接点は今まではなかった」と話すが、表面処理剤トップメーカーの日本パーカライジングと情報提供をし、JAXAとの共同研究テーマとして採択。宇宙空間に長く滞在すると、筋力が下がることはもちろん、免疫力も下がり、普段はかからない病気にかかる可能性がある。唐澤氏は「今は屈強なパイロットが行っているためすぐに必要はないが、宇宙ビジネスが今後広がるとリスクは否定できない」と話す。
小林製薬は抗菌成分の選定や抗菌性能評価を担当。JAXAから国際宇宙ステーション(ISS)で検出された微生物の情報提供を受け、地上でも感染原因になったことがある微生物など、リスクにつながるものを選び、抗菌作用があるものを開発した。宇宙空間へは人が地上から行くため、人由来の菌は存在しており、「マイナーなものはあったが、地上で未発見のものはなかった」(唐澤氏)。小林製薬の中央研究所などで微生物の評価をし、日本パーカライジングの固定化技術と合わせ、共同研究結果を提出。研究開始時に定めた抗菌性や耐久性に関する開発基準の一部を達成することができた。
JAXAとの共同開発はいったん終了したが、研究で残された技術課題の改良などは今後も日本パーカライジングと行う計画。ただ、実用化するためには「パートナー企業が必要」(唐澤氏)として、宇宙船や関連設備など、宇宙空間向けに人が入る設備を開発する企業と連携を進めていきたい考えだ。
また、研究開発中には、小林製薬の既存の持続性抗菌剤「コバガードN」の特性や性能が活用可能な部分があると考え、共同研究の中で使用。その使用実績により、コバガードNが、JAXAが宇宙航空の魅力を地上の生活へ届けるために推進するロゴマーク「JAXA レーベル コラボ」の付与を受けた。コバガードNは地上での活用も広げていくことで、事業拡大を目指す。
(2024/1/19 12:00)
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