(2024/3/8 05:00)
米中両大国への懸念が尽きない。トランプ氏が米大統領に再選されれば民主主義と国際秩序が脅かされ、極端な保護貿易が堅調な米国経済、さらに世界経済も失速させかねない。習近平政権は開催中の全国人民代表大会(全人代)で経済再生に向けた明確な道筋を示せず、東アジアの安全保障を脅かす軍拡が強調された。国際秩序と世界経済の先行きは楽観できず、日本は難しい対応を迫られつつある。
トランプ氏が11月の米大統領選の本選で、共和党候補の指名を事実上獲得した。民主主義と国際秩序を重視するバイデン大統領と、米国第一・保護主義のトランプ氏をめぐる米国の分断が鮮明な直接対決となる。米国の世論調査ではトランプ氏優位との報道もある。同氏は議会占拠事件など民主主義を脅かす複数の罪で訴追されているが、再選も現実味を帯びてきた。
ビジネス感覚のディール外交を展開するトランプ氏が大統領となれば、米国のウクライナ支援は滞り、イスラエルへの強い支持で中東情勢もさらに悪化しかねない。パリ協定(気候変動問題に関する国際的枠組み)からも再離脱し、保護貿易へと大きく舵(かじ)を切る。米国が国際社会での信頼を失い、米国経済も減速させると警戒する必要がある。同氏は全輸入品に一律10%、対中輸入品に60%超の関税を適用する意向で、米中対立の一段の先鋭化も懸念される。
米国の台湾関与が弱まり、日本に防衛費増額を迫る可能性があることにも留意したい。
一方の中国。2024年の実質成長率目標を「5%前後」としたがハードルは高く、経済再生の道筋も見えない。24年に発行する1兆元(約21兆円)の超長期特別国債も景気浮揚効果は一時的とみられ、懸案の不動産不況と雇用不安に抜本的な対策を講じない点が懸念される。一方で台湾有事も念頭に過去最大の国防予算案が示され、東アジアの安保に大きな懸念を残す。
日本は世界経済の減速も視野に内需主導型の成長を目指しつつ、欧州やグローバルサウスなどとの連携も強化し、流動的な国際秩序の維持を模索したい。
(2024/3/8 05:00)
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