(2024/5/17 12:00)
学生時代に読んで印象的だったのが、梅原猛著『隠された十字架―法隆寺論―』だ。京都市立芸術大に通っていた友人から「学長の本があるから読んでみろ」と言われたのがきっかけで、法隆寺は聖徳太子の怨霊を鎮めるために建てられたという仮説を論じる内容だ。教科書で勉強した歴史観が、一つひとつひもとくと違った角度で見えてくるのが面白い。梅原氏は地元・愛知県碧南市の文化施設「哲学たいけん村無我苑」の名誉村長に就任され、以来は直接聞くことができた。
これまで学んできた歴史も一つの流れとして正しいかもしれない。しかし良い人も悪い人もいれば、言い分も人それぞれ。単なる物語ではないし、その時々の風習もある。古事記や日本書紀まで扱った梅原氏の『怨霊と縄文』もそうだが、物事は言われた通りではなく、ちゃんと多面的に見なければならないという捉え方の部分で勉強になった。今も普段から「一方聞いてさたするな」といったことは意識している。複数の人に話を聞いて情報を立体的に捉えた上で動く。そういう感覚は持たなければならないだろう。
会社員の頃は経営や人事評価制度など、ビジネス系の本ばかり読んでいたが、古いものや歴史は元々好きだ。最近は葉室麟著『銀漢の賦』を出張のお供にした。家老、下級武士、農民と身分の異なる3人の男の友情や使命感、互いへの思いなどが複雑に交錯する内容だ。歴史物は義理と人情みたいな部分も好きだが、家族や愛する人と、家名や役職、守るべき自分の周りの人間뗙などのはざまで悩むような所も、何か忘れかけていた感覚を思い起こさせる。
少し前には黒柳徹子著『窓際のトットちゃん』も読み返した。戦前から戦中というあの時代に、子どもの個性を認めて伸び伸び育てた「小林先生」のあり方は素晴らしい。自由にやらせてみる、思いを持ってやったのなら失敗してもいい、といった考え方は、多様性の時代の今こそ大切にしたい価値観だ。
(2024/5/17 12:00)
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