社説/「石破内閣」発足(上)与野党論戦尽くし信を問いたい

(2024/9/30 05:00)

自民党の石破茂新総裁が10月1日に「第102代内閣総理大臣」に指名されることが事実上決まった。非主流派だった石破氏だからこそ政治改革が進むとの期待がある一方、挙党一致とならずに党分断の可能性が拭えない。当面の焦点は、石破氏が言及する「早期」の衆院解散・総選挙の行方に移る。自民党は変われるのか、内外に山積する課題にいかに臨むのか、新内閣は臨時国会で野党との論戦を尽くし、国民の信を問いたい。

石破氏は自民党総裁選で、裏金問題を念頭に「自民党がルールを守り、国民が検証できる仕組みを作らないといけない」と語った。有言実行を求めたい。

ただ党内基盤の弱さから、裏金問題の実態解明には後ろ向きで、処分された議員を総選挙で自民党公認とするかは明言を避ける。有権者が納得する政治改革の歩みを進め、政治不信を払拭できるのか、自民党は今度こそ改革の本気度が問われる。

党内融和の行方も大きな焦点だ。政治資金問題が顕在化した安倍晋三路線からの転換は、党を分断しかねない。石破内閣の顔ぶれ、石破氏が目指す政策をどこまで実現できるのかを注視したい。立憲民主党は総選挙で穏健保守の取り込みを目指すという。“党内野党”と形容されてきた石破氏がいかに党をまとめるか早々に手腕が試される。

世界は、国際秩序を脅かす歴史的な転機を迎え、日本は安全保障をはじめ経済や少子化、エネルギー問題など課題が山積する。石破氏は中国を念頭に、日米同盟を基軸としつつ、アジアによる集団安全保障体制の構築や非核三原則の修正を視野に入れる。ただ中国とは「対立と協力」の均衡を保つことが肝要である。互恵関係も模索し、東アジアのリスクを軽減したい。

経済政策は現政権の路線を継承する。経済界はデフレ完全脱却や原子力発電所の最大限の活用を期待する。秋に効果的な経済対策を講じた上で、石破氏自身が目指す地方創生を推進しつつ成長型経済に移行したい。先送りできない困難な課題を一つひとつ乗り越え、日本は政治と経済で新たな景色を描きたい。

(2024/9/30 05:00)

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