社説/骨太の方針(4)中堅は投資拡大、中小は再生を

(2024/6/20 05:00)

中小企業政策の二極化が進む。政府は、人材難や後継者問題を抱え、経営環境が厳しい中小企業に事業承継やM&A(合併・買収)を促し、生産性の向上につなげたい意向だ。一方、成長分野に挑む意欲的な中小企業を金融面などで重点支援し、国内投資や雇用創出を促す。雇用の7割を占める中小企業の新陳代謝が進み、日本経済の稼ぐ力が強化されると期待したい。

政府は経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)の原案で、地域経済をけん引する「中堅企業」と、雇用の多くを支える「中小企業」の稼ぐ力を強化するとした。ただ中小企業に対する金融支援は、7月以降にコロナ禍前の水準に戻し、経営改善や事業再生に支援の重点を置くとしている。資金繰り支援で事業を継続してきた企業の事業承継やM&Aが促され、経済が活性化するかを注視したい。

経済同友会は、中小企業の保護政策が日本の生産性を低下させたとし、競争力のある企業に資本と労働力を移す合従連衡を促すべきだと提言していた。

政府は骨太方針(原案)で、事業承継とM&Aの環境整備を進めるとした。事業承継税制の特例措置を見直し、24年末とした後継者の役員就任時期を延長し事業承継しやすくする。またM&Aを円滑化するため、M&A仲介事業者に手数料体系の開示を求める。各事業者で異なる手数料の透明化が進めば、料金の引き下げにつながり、中小企業が仲介事業者を利用しやすい環境になると期待される。

一方、地域経済をけん引する中堅企業や、売上高100億円以上への成長を目指す中小企業の設備投資やM&A・グループ化を後押しする。政府は5月末に成立した改正産業競争力強化法に、中堅企業を補助金や優遇税制で支援することを盛り込んでいる。地方で持続的賃上げや国内投資を促し、中小企業へのM&Aによるグループ化も後押しするという。

「金利のある世界」は中小企業の経営環境を一段と厳しくする。中堅企業が中小企業の労働移動の受け皿となれば、産業界全体の賃上げも進むはずだ。

(2024/6/20 05:00)

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