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株式会社電力シェアリングは、自治体の協力を得て、再別化商品としてのカーボンクレジット相対取引の活性化を図る「デコ活」ナッジ実証実験を実施します

(2024/8/18)

カテゴリ:商品サービス

リリース発行企業:株式会社電力シェアリング

株式会社電力シェアリングは、自治体の協力を得て、再別化商品としてのカーボンクレジット相対取引の活性化を図る「デコ活」ナッジ実証実験を実施します

脱炭素社会実現を目指す新しい国民運動「デコ活」の下、自治体の協力を得て、地域の環境再別化商品としての環境・社会負荷の負荷の低いカーボンクレジット相対取引の活性化を図る実験を実施します

株式会社電力シェアリング(本社:東京都品川区、代表取締役社長:酒井直樹)は、脱炭素社会実現を目指す新しい国民運動「デコ活」の一環として、住まいの昼DRを促すナッジ実証を、環境省の委託を受けて実施しています。




デコ活」とは、「脱炭素につながる新しい豊かな暮らしを創る国民運動」の愛称であり、二酸化炭素 (CO2)を減らす(DE)脱炭素(Decarbonization)と、環境に良いエコ(Eco)を含む"デコ"と活動・生活を組み合わせた新しい言葉です。
環境省の「デコ活」紹介サイト: https://ondankataisaku.env.go.jp/decokatsu/

当社では、デコ活の一層の主流化に貢献すべく、当社オリジナルのDSナッジモデル:電力版をベースに、複数の自治体の協力を得て、再別化商品としてのカーボンクレジット相対取引の活性化を図る「デコ活」ナッジ実証実験を実施します。
実施内容
再エネ価値・省エネ価値の実売実証を行う。WTP、WTA及びWTS等を測定し、取引価格の固定・変動や、環境価値に付随する属性情報の表示内容の変更等に伴う売買行動の変容(取引量や取引価格等の変化)を、検証する。

J-クレジットなどのオフセット証書を含めた各種環境価値・証書等の商品性や追加性等についての国内外での評価や課題に関しての情報を収集し、消費者への商品特性に応じた適切な情報提供や、WTPを向上させるための訴求方法について検討する。

調査会社のモニターを対象に、各種環境価値・証書等の差別化商品の相対取引を前提とした、WTP/WTA/WTSに関するランダム化比較試験を実施する。産地表記や、地域のイベントへの寄付等を含め、社会実装に向けた社会性・利他性等に訴求し、購買意思や購買単価等の向上を促すナッジ介入を地域内外の被験者に対して行い、その属性・意識別の有効性を検証する。

J-クレジット等の市場取引・相対取引慣行の現状や課題を分析し、商品や地域特性に応じた適切な相対取引モデルを複数構築し、その有効性をランダム化比較試験等で検証する。

その際、単一の取引でなく、複数回の相対取引での同一コミュニティ内での売買者間「お得意様」・「贔屓・推し事業者」といった、長期的な関係構築を前提とするナッジ介入モデルを構築し、同一販売者群・購買者群の間での繰り返し取引で、WTPの向上(馴染みの販売者だから高く買う)、WTAの低減(馴染みの購買者だから安く売る)効果を検証する実証モデルを構築し、予備実験によりその効果を入札額等を指標として検証する。
(参考)差別化商品としてのオフセット証書取引を巡る現状と課題(当事業者の見解であり、環境省の見解ではないことに留意されたい)

カーボンクレジット(オフセット証書):
欧米では、再エネ電力の普及のため、1990年代前後から、由来証明書(GOR: Guarantee of Origin)、環境証書(REC: Renewable Energy Certificate)を用いた取引が、特にオフセット証書として、活発に行われてきたが、様々な構造問題が顕在化し、DX化の世界潮流と相まって、国連や米国政府・GAFAの一角が主導し、その見直しの機運が急速に高まっている。

カーボン・オフセットとは、「自身の温室効果ガスの排出について、排出量に見合った温室効果ガスの削減活動に投資すること等により、排出される温室効果ガスを埋め合わせるという考え方(環境省)」である。

日本では、再エネに限らず、省エネ設備の導入や森林管理等による温室効果ガスの排出削減・吸収量をJ-クレジットとして認証し、オフセット証書として流通している。また、グリーン電力証書や非化石証書 についても、オフセット証書として実質的に機能しているという解釈も可能である。

こうしたオフセット証書を活用する、とりわけ石炭火力発電などのCO2を排出する電力と合成して、実質的な再エネ電力とする(便宜的に、以降これを合成再エネ電力と呼称し、再エネ発電所由来の再エネ電力を純正再エネ電力と呼称する)手法については議論があり得る。

低調な環境証書取引
カーボンクレジット取引の主流化を政府が企図する中で、多くの事業者がマーケット・プラットフォーマーを標榜し商用事業を開始している。例えば、東京証券取引所は、R5年10月にカーボン・クレジット市場を開設し、取引を開始している。

しかし、同取引所の1日当たりの取引総量は約1,000t(約300万円)と、売上高が市場運営費用を明らかに下回る状況であり、他の民間プラットフォーマーも同じく収益化が困難な状況と推察する。取引が活性化しない一因として、Jクレジットが認証を経て販売可能になるのは、発電から概ね1年後であり、価値に時間性を有しないので、売り手は在庫を持ち、これを売り急ぐ必要もなく、買い手も全ての証書でオフセット可能なので買い急ぐ必要がないため、ザラ場取引をする必然性に欠けることにあると当事業者は思料する。

頻発する太陽光発電所出力抑制

次に、オフセット証書取引の前提となるわが国の電力取引制度・慣行の課題を述べる。

近年、わが国では太陽光発電所の出力抑制が頻発し、さらに増加傾向になる中で「再エネの無駄遣い」として、マスコミが取り上げるなど、大きな社会問題となっている。この問題は、オフセット証書の特徴と関連している。

現在の電力・オフセット証書取引システムにはいくつかの構造的な課題がある。

第一に、一般の電気料金(電力契約)の下では、電力需要家は、予めある時間帯に消費(購買)する電力量を定める必要がない。契約電力以内(大口の実量制契約では事後的に最大電力としての契約電力が決まるので実質的にある時間帯における電力量の定めがない)であれば、いつでも好きな時に、好きなだけ消費することが可能(予め定められた行使価格で好きなだけ買うことができる一種のコールオプション)である。

独占事業体制下であれば、電気事業者側が、消費量を予測して、冗長性を持たせて(供給予備率を高めに設定して)需要量に追従して、系統内にある全ての発電所の発電量を調整(系統運用もしくは給電)すればよかったが、自由化市場においては、そうもいかない(容量市場や調整力市場がその補完的な役割を期待されてはいるが、十全にその機能を発揮できているとは言い難い)。

反対に、再エネ発電の固定価格買い取り制度(FIT)の下では、発電者は、いつでも固定価格で好きなだけ売電できる(予め定められた行使価格で好きなだけ売ることができる一種のプットオプション)。

このため市場の価格調整機能が十全に働かないリスクがあると当事業者は思料する。

同様の問題に直面した米国加州では、上記の欠陥に正面から対峙し、プロシューマの余剰買取制度を抜本的に改訂した。

まず、加州が2023年に導入した新しい制度では一般家庭の余剰時の売電を禁止する強権的措置を発動している。これは大きな社会論争となったが、州政府は押し通した。さらに、卸売り市場の価格に連動する時間帯別・月別買取単価表を事前に示すこととした。さらに、系統接続して売電する世帯から一律に接続料金を徴収した。

一方、日本では、電力小売会社に昼間の時間帯の料金を安くする「昼シフト電気料金メニュー」の導入を義務づける法制化を進めており、九州電力は、こうした動きに呼応し、2024年2月に同メニューを発表するなど、消費者の行動変容に訴えかける手法に打って出ている。

しかし、電気料金の価格弾性値(とりわけ短期の弾性値)はその商品特性から、一般に低く、また日本は他国に比して低いという先行研究もあり、その効果はすぐには見込めない。こうした現状を踏まえたうえでナッジによるレバレッジの拡大を図るべきであると考える。

オフセット証書の歴史的役割の変遷
非化石証書が導入される前は、グリーン電力証書が日本におけるオフセット証書の主流であった。グリーン電力証書は、電力供給が独占体制であった時代に、一定の再エネ電源比率の義務化を求める市民団体への対応として、電力会社がその導入を主導した背景がある。

再エネオフセット証書は、特に追加性の視点から、再エネ導入が圧倒的に不足していた時代には極めて有効な手法であった。電気は貯められない、再エネはいつ発電されるかの不透明性や時間偏向が高い、とりわけ太陽光発電は日照時間に限定されるという性質を有するが、かつては、どの時間帯でも再エネが圧倒的に不足していた(再エネ1.0)時代には、FITの導入とオフセット証書でのそのコスト回収は有効であった。

ところが、FIT政策による太陽光に偏った再エネの大量導入で、再エネ比率の時間格差が深刻化し、上記のように昼は太陽光発電の出力停止が頻発するようになっている。以下の図は、時間帯毎の再エネ(赤)と火力発電(灰色)の系統における発電量のイメージであり、当事業者の提唱する電力システムの脱炭素化の発展段階を示すものである。




以下は、2023年3月20日月曜日の東電エリアの電源種別時間帯別発電量とこれに対応する送配電網炭素強度(送配電網に流通する電力1kWhあたりのCO2排出量)の時間推移である(当社作成)。夜間は火力発電に依存し、脱炭素化が停滞。昼と夜で炭素強度が2倍の差異があり、発電・流通設備稼働率低下により、電気料金が高止まりする構造的要因となっている。








このような炭素強度の昼夜間格差は世界的な傾向である。欧州においては、風力発電の普及で、平準化されていたが、近年の洋上風力発電事業のクラッシュによって、例えばドイツでも急速に太陽光発電への依存率が高まっており、事態が深刻化している。

オフセット証書の問題点
しかし、電力は一般的に貯められない、有線でないと流通できないという財の特殊性から、時間と地理的空間を超えての取引ができないにも関わらず、異なる時間帯、あるいは異なる地域での再エネ発電により生成される証書を用いてのオフセットを許容する現在の慣行においては、再エネ電力が潤沢にある時間帯・地域においてはますます新規の再エネ電力供給が行われる一方で、再エネ電力が不足する時間帯・地域においては火力発電等の化石電源の比率が固定化されるといった課題が顕在化している。

時間のミスマッチ
第一の課題は、オフセット証書に供されることを目的として発電される再エネ電気と、オフセットされる火力発電の電気の発電・消費時間のミスマッチである。電力は一般に貯められないため、特に太陽光発電の割合が多いわが国では、再エネは昼間には潤沢にある一方で、夜間に再エネ電源が不足する傾向がある。

しかし、昼間の太陽光発電で創出される供給が超過する安価な非化石証書を用いて夜間の火力発電由来の電力をオフセットすることを許容する現在の慣行では、ますます太陽光発電の導入が進む一方で、本来の高価な時間価値が埋没してしまい、蓄電池等の投資が進まずに、昼夜間の再エネ格差を固定化してしまう懸念がある。また、現在主流化が進むコーポレートPPAはその設計次第ではこの課題を助長しかねない。

コーポレートPPAの定義は、「再エネ電源の所有者である発電事業者 と電力の購入者(需要家等) が、事前に合意した価格及び期間における再エネ電力の売買契約を締結し、需要地ではないオフサイトに導入された再エネ電源で発電された再エネ電力を、一般の電力系統を介して当該電力の購入者へ供給する契約方式。」である。





この時、期間を通算して、太陽光発電量と需要家の消費量をマッチングしていることが多いが、一方でその同時同量性を確保していない場合があるとも考えられる。

この場合、昼間の太陽光発電の余剰電力は、他の需要家や市場等に売却し、CO2排出削減価値のみを証書化して取り置き、夜間の不足電力は火力発電等の電力を別途調達し、これに取り置いた再エネ証書と合成することで、「実質再エネ」と称することもあり得る。

しかしながら、この「実質再エネ」と同時同量性を完全に確保した「リアル再エネ」を同一に扱う現状では、再エネのタイムシフト価値が埋没し、蓄電池等を設置する等の新規追加投資のインセンティブが働かない懸念がある。

太陽光発電がオフサイト・オンサイトで急増した場合、ますます再エネの昼夜間格差が拡大して、夜間の火力発電稼働による炭素強度の高止まりを招きかねない。

場所(地理)のミスマッチ
九州地方では再エネ発電所立地環境条件が、関東地方よりも整っており、関東地方では再エネも含めた電力がタイトになる一方で、同じ時間帯で、九州では再エネが過剰となり発電を抑制する出力制御が行われる状況も近年頻繁に発生している。

このような状況で、九州地方の供給が超過する安価な非化石証書を用いて、関東地方で消費する電力をオフセットすることを許容する現状の取引慣行では、立地コストの安い九州地方ではますます再エネ電源が建設される一方で、本来の高価な空間価値が埋没してしまい、関東地方での再エネ投資が進まないという問題を引き起こしかねない。

バーチャルPPA
現在主流化しつつあるバーチャルPPAはその問題を加速化しかねない。

バーチャルPPAは、コーポレートPPAの応用系とも言える。日経BP社の定義では、「バーチャルPPAとは、新設した再エネ発電所が生み出した電力と環境価値を別々に流通させる仕組みで、電力は連系するエリアの卸電力市場に売却し、環境価値については再エネ電源を確保したい需要家に長期契約で販売する。」となっている。




このような場合、同時同量性が担保されないばかりか、場所の同時同量性も担保されないリスクがある。

例えば、比較的低コストで建設可能な九州地域で発電所を建設し、東京で消費することも場合によっては認められうる。この場合、より立地環境の良い九州地域に再エネ発電が一層集中し、立地環境の良くない関東地域との再エネ導入格差が一層拡大する懸念がある。

現在、系統連系の拡大投資が議論されているが、追加的系統連系の費用対便益と、バーチャルPPAにより再エネ格差を拡大させることによる費用対便益について、十分な議論がなされているとは必ずしも言えない状況にある。
追加性に関する課題
カーボン・オフセットとは、「自身の温室効果ガスの排出について、排出量に見合った温室効果ガスの削減活動に投資すること等により、排出される温室効果ガスを埋め合わせるという考え方(環境省)」である。

日本では、再エネに限らず、省エネ設備の導入や森林管理等による温室効果ガスの排出削減・吸収量をJ-クレジットとして認証し、オフセット証書として流通している。また、グリーン電力証書や非化石証書 についても、オフセット証書として機能している。

こうしたオフセット証書を活用する、とりわけ石炭火力発電などのCO2を排出する電力と合成して、実質的な再エネ電力とする(便宜的に、以降これを合成再エネ電力と呼称し、再エネ発電所由来の再エネ電力を純正再エネ電力と呼称する)手法については以下を含む議論があり得る。

第一に追加性に関してである。例えば、航空会社が、その運航に関わるCO2の排出をJクレジットでオフセットする場合を考えてみる。

Jクレジットは、その価値創出時期と、オフセットされる排出が行われる時期が異なることが一般的で、その乖離に期限の定めがない。十分に在庫がある状態で事後的にJクレジットを購入し、将来のオフセットに用いる場合、あるいは、消費者がオフセット証書付き航空券を購入することによる追加性が低いとの考え方も成り立つ 。

ここでいう、追加性とは、その購入行為により、新規に再エネ発電所を建設するなど、新たな脱炭素化に対する投資を促す効果があることを意味する。
同類性・同質性に関する議論
第二に、オフセットされる商品・サービスと、オフセット証書の同類性である。例えばEUでは、火力発電所由来の電力を外国の植林活動で創出された証書でオフセットすることなどが、「グリーンウオッシュ」として指弾され、前述の指令成立の契機となっている。

Jクレジットにおいても、森林由来の証書で、これとは直接関係のないエネルギー由来の温室効果ガスをオフセットするのは適切ではないという考え方も成り立つ。

ただし、日本の電気事業においては、合成再エネ電力を生成する際は、専ら再エネ由来のJクレジットを用いるのが一般的である。
希少性・需給関係の差異
第三に、オフセット価値を創出する財とオフセットされる財の希少性の差異、あるいは需給関係の差異である。

上記の時間・位置のミスマッチなどが代表例である。従って、オフセット証書の活用に当たっては、とりわけ電力においては、オフセットする側とされる側の財の希少性の差異・あるいは需給関係の差異による一種の裁定取引を抑止するような工夫が望まれるところである。

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