社説/総合経済対策(下)費用対効果と円安にも目配りを

(2024/11/14 05:00)

総合経済対策の柱の一つである物価高対策が「金額ありき」とならないか懸念される。石破茂首相は2024年度補正予算案について、前年度の13兆円を上回る規模を想定する。だが財政の膨張は皮肉にもインフレ圧力を強める。物価高で生活が困窮している低所得者に対象を絞るなどメリハリを利かせた対策に仕上げたい。輸入物価を高止まりさせる円安基調の為替相場にも、目配りする必要がある。

総合経済対策の原案では、物価高対策として低所得者向け給付金を支給するほか、地方交付金を拡大し、地域の実情に合った物価高対策を講じる。国民民主党の公約である「年収103万円の壁」の見直しや、電気・ガス・ガソリン補助金の再開・延長は、自民・公明両党が国民民主党との協議を重ね、22日にも閣議決定したい意向である。

足元では、賃金の上昇が物価の上昇に追い付いておらず、物価高対策で経済好循環を回すこと自体は適切な政策判断だ。

ただ、財政健全化への歩みは後退する。25年度の国・地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)は黒字化の可能性があったが、補正予算を編成しないことが前提だった。PB悪化は不可避と留意したい。

国民民主党の要求通り、所得税が非課税となる最低年収を178万円に引き上げると、7兆―8兆円もの税収不足となり、現実的な選択でない。基礎控除の引き上げは高額所得者ほど恩恵が大きい違和感もある。また低所得者向け給付金と、電気・ガス料金などへの補助金を同時に講じる必要があるのか、予算のバラマキは厳に戒めたい。

補助金や給付金の効果は一時的だ。成長戦略と社会保障制度改革で将来不安を払拭し、個人消費を喚起する必要がある。

足元の円安も懸念される。トランプ米次期政権による大規模な減税や財政出動は米長期金利とドルの上昇を招き、円安が日本の物価を高止まりさせかねない。日本では国民民主党が金融緩和の継続を求めているが、日銀は内外の経済情勢を慎重に見極めつつ、円安を是正する利上げスタンスを維持したい。

(2024/11/14 05:00)

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