[ その他 ]
(2015/11/10 05:00)
「ものづくり日本大賞」の内閣総理大臣賞を、著名企業と並んで家具製造の天童木工(山形県天童市)の技術者チーム5人が受賞した。針葉樹を成形加工し、いすやベンチを製造する技術を世界で初めて実用化した▼スギやヒノキなどの針葉樹はまっすぐ伸びる特性の反面、加工のために曲げると折れてしまう。扱いの難しい針葉樹だが、デザイナーや愛好家の心をくすぐる良さもある▼同じ品種でも一つ一つ表情が異なる”一点もの“になりやすく、木目のコントラストも広葉樹と比べて明確に出るのだ。そこで技術陣が奮闘し、2014年10月に商品化にこぎ着けた▼利点は他にもある。花粉症の原因となるスギなどを間伐して使うので花粉症患者に感謝される。森林の手入れが進んで荒れた山を減らす効果も期待できる。9日に首相官邸で開いた表彰式では、安倍晋三首相が「国内総生産600兆円を目指す主役は匠の技術だ」とエールを送った▼環太平洋連携協定(TPP)が発効すれば、日本の木製家具に域内国が課す関税は数年内に撤廃される。これまで海外販売をしてこなかった天童木工にとって輸出のハードルは高い。しかし、そんな不可能も可能にするのがモノづくりの神髄だろう。
(2015/11/10 05:00)