[ その他 ]
(2015/12/1 05:00)
子供の頃、自宅の増築の際に建築職人の手慣れた仕事ぶりに見入っていたことを思い出す。休憩時には茶菓を運んでいき、道具をみせてもらったり、使い方を教えてもらったりもした▼近所には、家業が大工や左官、板金、経師など家づくりにかかわる同級生も多かった。わが家に不具合があれば電話一本で彼らの父親や祖父がやってきて、すぐ直してくれたものだ▼親から買い物を頼まれては行った商店街は、その後のスーパーの台頭で衰退し、廃業が相次ぐ。同様に、職人を親に持つ友達が跡を継いだケースは少ない。経済効率が追求されるとともに”顔が見える仕事“は日常生活から遠ざかった▼もちろん現在も、さまざまな産業分野で機械やロボットに置き換えられない職人の仕事がある。ただ効率追求の結果、活躍の舞台は工場などに集約され、品質管理の名の下に作業のマニュアル化も進んだ▼巷(ちまた)を賑(にぎ)わす杭(くい)工事の施工データ流用・改ざん問題。作業報告書に施工データを添付すれば、杭が強固な地盤まで達したことの証明になる。そこにうそが紛れ込んだのは、効率追求の弊害とはいえないか。人とのつながりが希薄になってしまったことが、職人魂をそいでしまった面もあるように思う。
(2015/12/1 05:00)