[ オピニオン ]
(2015/12/7 05:00)
与党は10日にも、法人減税を柱とした2016年度税制改正大綱を策定する。産業界にとっては朗報だが、代替財源となる課税強化が盛り込まれることも忘れてはならない。中小企業の負担増の回避はひとまず固まったものの、17年度以降、もう一段の減税時に負担を強いられないか懸念が残る。
税制改正の目玉は、官邸主導で実現を目指す法人実効税率の29%台への引き下げだ。その代替財源として外形標準課税を強化する方針。資本金1億円超の企業の法人事業税(地方税)のうち、収益にかかわらず課す外形標準課税の割合を「8分の3」から「8分の5」に拡大して赤字企業の税負担を増やす。
中小企業への増税は、今回は見送られる見込み。ただ産業界は引き続き、新興国並みの法人実効税率25%を求めている。この引き下げ時に、中小が外形標準課税の対象になることが危惧される。
与党は15年度の税制改正で、資本金1億円以下を中小企業として一律に扱うかべきかの「妥当性について検討を行う」と明記した。経営再建中のシャープが資本金を1億円に減資する案が浮上し、批判を受けて撤回したことが記憶に新しいが、こうした極端な例には確かに歯止めが必要だ。
16年度税制改正では、実態は大企業でありながら資本金額によって税制優遇を受けることがないよう、対象を厳格化する動きもある。中小企業向け投資減税の特例措置の延長に際して、従業員300人までの企業に限定する案が浮上しているのはそのひとつだ。
中堅・中小企業であっても大企業に劣らぬ収益を上げている例はある。しかし経済政策「アベノミクス」の恩恵に浴してない中小の7割は、いまだに赤字。日本商工会議所は、より多くの中小が政策減税の恩恵を受けられるよう「税法の基準を3億円まで拡大」することを求めている。
法人減税の代替財源は企業課税の枠内にとどめず、税体系全体の見直しや経済成長の果実に求めるのが本来の姿だ。将来にわたっても、中小企業への安易な増税は許されない。
(2015/12/7 05:00)