[ オピニオン ]
(2015/12/8 05:00)
愛知県は、国家戦略特区として「外国人雇用特区」を提案した。技能実習制度の成績優秀者のうち日本語に堪能で、かつ帰国後1年以上の外国人を「産業人材」として長期間、受け入るものだ。これが日本人労働者の排除につながるようでは困るが、意欲的な労働力の不足に悩まされる産業界にとっては意味のある構想といえる。外国人、日本人を問わず、技能者が安心して能力を発揮できる制度を考えてほしい。
金属部品の機械加工を手がける中小企業の経営者からは「最近の若い子はちょっと叱ると辞めてしまう」という嘆きが聞かれる。中小とはいえ経営の安定した優良企業が正規雇用を提示しても、思うように労働者を集められない。
若手ばかりではない。かつて建設業から転職し、ようやく戦力になった中堅社員が、昨今の建築業の活況で古巣に戻ったという話もある。高騰した時給が魅力なのは分かるが、地道に技能を磨く社員を求める経営者は頭が痛い。
これに対し、技能実習制度で働く外国人への経営者の評価は総じて高い。「技術習得への姿勢が日本人とは違う」という。継続して同じ国から人材を受け入れる中小企業も少なくない。
一方で技能実習にも問題点はある。実習は建前だけで、安い労働力として使い捨てにしたり、法に反する労働条件を強いたりする企業や団体がある。実習生が逃亡してしまい、不法在留するケースも増えている。
もちろん日本の労働市場を一気に外国人に解放するのは無理だ。現状のままでは人件費の抑制が目的になりかねない。優秀な外国人技能者が日本人と同じ条件で雇用され、家族を含めて安心して生活できる環境を整える必要がある。
愛知県の特区構想では、外国人労働者と家族の生活支援機関も設立する方針。受け入れ先には次世代自動車や航空機、ロボットなど、今後の日本の産業を先導すべき分野が含まれる。
日本の産業をより高度化し、競争力を高めるには優秀な人材が必要だ。そうした人材を集め、育成できるような制度を期待する。
(2015/12/8 05:00)
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