[ オピニオン ]
(2015/12/18 05:00)
米連邦準備制度理事会(FRB)がついにゼロ金利を解除し、0・25%の利上げに踏み切った。米国の利上げは9年半ぶりのこと。失業率は5・0%とリーマン・ショック後の最悪時から大幅に改善、個人消費も堅調で景気が順調に回復しているため、利上げの条件が整ったとして米連邦公開市場委員会(FOMC)が全会一致で決定した。日欧が金融緩和を続ける中での米国の利上げは、世界的な資金の流れに大きな変化をもたらし、新興国経済を揺るがすことが懸念される。
FRBは2008年のリーマン・ショック後、米国が金融危機に見舞われた際、景気刺激策としてゼロ金利政策を実施した。しかし金利をゼロにしても効果がなかったことから、3回にわたって量的緩和を行った。その結果、景気が上向きに転じたため、14年10月には量的緩和に終止符を打ち、金融政策の転換を宣言した。その後も景気は順調に回復、15年6月にはイエレン議長が今年後半のゼロ金利解除を表明していた。
今回の利上げは予想されたことで、株式・為替市場はすでにそれを織り込んで推移してきた。とはいえ実際に利上げが行われると、市場はさまざまな反応をみせる。米国では株価が急上昇した。また米国から大量に資金が流入していた新興国から資金が流出する可能性が大きく、新興国経済に深刻な打撃を与えることが懸念される。そうなると世界経済を混乱に陥れることにもなりかねない。
米国の利上げで日米の金利差は拡大する。これは為替市場で円安ドル高が進行する要因となる。しかし利上げはすでに織り込み済みのうえ、原油価格の下落を背景に最近は円高傾向にあるため「1ドル=125円を超える円安には至らない」とみるエコノミストが多い。このため日本経済への直接的な影響は軽微といえそうだ。
今後の注目点は利上げのペースだろう。イエレン議長は「緩やかに進んでいくだろう」と述べている。利上げのペースが速いと、新興国経済への打撃が大きくなり、世界経済にも影響するため、FRBには慎重な判断が求められる。
(2015/12/18 05:00)
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