[ オピニオン ]
(2016/2/26 05:00)
シャープの再建は、台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業の傘下に入る形で決着した。最終契約はまだだが、何よりシャープ自身が熟慮の上でこの将来を選択したことを尊重したい。同時にこの問題では、日本の産業界が守るべきものが何かを考えさせられた。
数兆円規模の巨大企業でも経営を誤れば買収され、あるいは消滅してしまう。実際に電機大手には淘汰(とうた)された例がある。東アジアがひとつの経済圏に向かう中で、新興国による日本の有力企業買収は今後もあるだろう。
シャープが鴻海の子会社になって守られるのは何より日本の雇用だ。国民にとって最も重要なのは生活の支えであり、雇用を生む資本の国籍はさほど問題ではない。途上国ばかりでなく、先進国でも外資進出は歓迎される。
また金融資本も守られる。銀行団がシャープに対する債権放棄を免れれば、それだけマクロ経済にはプラスの影響が出る。
逆に失うものは何だろうか。メンツのようなものを別にすれば、最も疑われるのは技術である。しかし技術は時間とともに陳腐化する。絶えず磨きをかけることでしか守れない。相応の代価を得て移転することは間違っていない。鴻海・シャープの台日連合が技術を生かして大きく育つなら、日本にとってもメリットがある。
以上のように考えれば、鴻海傘下でのシャープ再建は拒否反応を示すべきものではない。オールジャパンで再建が可能ならそれにこしたことはないが、他の生き残り策も有効だ。
ただ懸念もある。鴻海・シャープ連合が、液晶分野でジャパンディスプレイ(JDI)と競合することだ。海外大手を追撃する立場の両者が、日本国内で市場を取り合うようでは成長が阻害される。政府系ファンドの産業革新機構がシャープを鴻海に渡したくなかったのは、それが理由だろう。
今や製造業の少なからぬ分野が世界を市場として戦っている。JDIと組むか、それとも鴻海傘下の方が勝算があるのか。シャープと関係者が、そこまで考えて結論を出したのだと信じたい。
(2016/2/26 05:00)
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