[ オピニオン ]

社説/熊本・大分の大地震−防災・減災意識を改めて高めよう

(2016/4/19 05:00)

熊本県から大分県にかけて、14日から断続的に続いている強い地震は、地震が少ないと言われてきた九州地方に甚大な被害をもたらした。自動車や半導体などモノづくり企業の多くが被災し、鉄道や高速道路の寸断は自動車業界をはじめ、産業界のサプライチェーンに影響を及ぼしている。今回の地震は改めて、震災対応の重要さを産業界に突き付けた。

最大震度7以上を記録した大地震は、これまで阪神・淡路(1995年)、新潟県中越(2004年)、東日本(11年)、今回の熊本の4回。1923年(大正12)9月の関東大地震当時には震度7の設定はなかったが、こうしたものも加えれば国内各所に震源が分布する。

日本列島には、大地震が起きない場所はないという現実を再確認せざるを得ない。企業が製造拠点の立地のみでリスクを抑止することは難しい。

九州の近代工場の立地の先駆けは、官営八幡製鉄所(現新日鉄住金)だ。1901年(明治34)操業の八幡製鉄が、現在の北九州市を選んだ理由はいくつかある。産炭地が近いこと、中国大陸への輸送を含めた交通の要衝であること、そして九州には地震が少ないことであった。八幡製鉄の誕生は、九州の安価な土地や豊富な労働力と相まって多くの工場立地を促すことにつながった。

これまで九州の官民は、防災対策の主眼を毎年襲来する台風や水害に置いてきた。その半面、地震に対する危機意識が希薄ではなかったろうか。

トヨタ自動車は高級車レクサス、ホンダは2輪車の拠点を九州に置く。熊本で生産するソニーのCMOS(相補型金属酸化膜半導体)画像センサーは米アップルはじめ多くの情報機器が採用している。長引く生産休止は、日本のみならず世界経済も”揺るがし“かねない。

九州のみに問題を限定することは適当ではない。日本が産業立国である限り、地震と常に向きあっていかなければならない。企業も自治体も、改めて防災・減災対策を見直し、強化することが必要だ。

(2016/4/19 05:00)

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