[ オピニオン ]
(2016/4/20 05:00)
経団連は20、21日の両日、主要国首脳会議(サミット)構成国の経済団体によるビジネスサミット「B7東京サミット」を開く。政府首脳の協議と歩調を合わせつつ、経済界ならではの共同提言が期待される。
ビジネスサミットは、2007年のサミット開催国だったドイツのドイツ産業連盟が各国の経済団体に呼びかけて創設。毎年のサミット開催国の団体が持ち回りで主催し、政府首脳に対して提言する。日本での開催は08年以来、2回目だ。
5月の伊勢志摩サミットでは外交問題や気候変動・エネルギー問題とともに、新興国経済の減速や貿易の減退への対応や持続可能な成長を目指すための質の高いインフラ投資が大きなテーマとなる。B7会合では、これをにらみつつ(1)経済成長、(2)貿易投資、(3)デジタル革命、(4)地球規模の問題解決―の四つの討議を予定している。
中でも注目されるのは、経済界として深く切り込む予定のデジタル革命の討議。ここでは情報セキュリティーや個人情報保護と越境データの扱いに加え、インダストリー4・0などの“第4次産業革命”を実現する環境づくりを議論する。経団連は、日本発の新たな概念である「ソサエティー5・0」を各国に提唱する考えという。
ソサエティー5・0は狩猟社会、農耕社会、工業社会、情報社会に続く新たな社会の概念。サイバー空間と現実空間が高度に融合した「超スマート社会」を目指す。政府の総合科学技術・イノベーション会議で産業界代表が提唱し、第5期科学技術基本計画に盛り込んだ。
ビジョンやトレンドづくりを苦手にしがちな日本から、こうした次世代を強く意識させる概念が出てきたことを評価したい。モノづくり現場の効率化だけでなく、社会とのつながりやサービス産業の発展可能性につながる考え方で、各国の団体も受け入れやすいだろう。
世界経済の混迷が増す中で、同じ価値観を持つ先進国の経済界が果たす役割は大きくなっている。緊密に政治と連携し、指導力を発揮してもらいたい。
(2016/4/20 05:00)