[ オピニオン ]
(2016/6/15 05:00)
エネルギーを効率的に使うスマートコミュニティー(次世代社会インフラ)が、各地に登場している。最新事例をみると、スマート技術が実証から実用段階に入ったことを感じる。この流れを加速するために、次は普及策を考える番だ。
東京ガスは5月末、豊洲埠頭地区(東京都江東区)に電気と熱を同時に供給するエネルギーセンターを開所した。築地から移転する生鮮市場を含めた地区全体の二酸化炭素(CO2)排出を40%削減できるという。
またパナソニックは、神奈川県藤沢市に続く『スマートタウン』第2弾の開発を横浜市港北区で始めた。商業施設や集合住宅への熱電併給に加え、水素エネルギーの活用も検討する。
順調に市場が立ち上がったようにみえるが、本格普及は容易ではない。最新鋭のインフラづくりに携わった大手電機メーカーの担当者からは、いくつもの課題が聞かれる。
最も多いのは、事業リスクに対する心配だ。構想段階から街づくりに携わるスマートコミュニティー事業は企業が収益を得るまでの時間が長い、また太陽光発電や蓄電池を地域全域に配備するためには高コストがネックになる。エネルギー需給を管理したり節電を支援したりするサービスを提供しても採算がとれる保証はない。
それでも都市部なら住民や企業の入居が期待できるが、地方展開ほどハードルが高い。そもそも対価の算定方法があいまいな上に、インフラのスマート化の費用を負担するのは自治体か住民なのかも、はっきりしないのが実態だという。
新しい市場に課題はつきものであり、先に突破した企業が競争力を得る。とはいえ規制緩和や補助金、標準化など企業努力だけでは解決できない課題もある。場合によっては他社と一緒に、国へ働きかけることも必要だろう。
15日に東京・有明で「スマートコミュニティJapan」(日刊工業新聞社主催)と関連のシンポジウムが始まる。普及に向けた課題を共有し、解決策を話し合う場にしてほしい。
(2016/6/15 05:00)
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