[ オピニオン ]
(2016/8/31 05:00)
最近、スポーツカーの新型車の発売が相次いでいる。クルマ好きのためのニッチな市場だと思われがちだが、メーカーにとってはモノづくりのノウハウを蓄積する好機であり、歓迎すべき流れといえる。
国内の自動車市場が伸び悩む中で、スポーツカーは活況だ。三菱総合研究所によると、リーマン・ショックや東日本大震災の影響で2011年に約6000台に減ったが、これを底に上昇に転じ、15年は過去10年で最高の4万台超に増えた。
50代以上が、自分のライフスタイルを楽しむために購入することが多いという。自動運転やエコカーがもてはやされ、安全・環境・実用性が重視される中で、興味深いトレンドといえるだろう。
走行性能やデザインを追求したスポーツカーは、一握りのクルマ好きの客層を満足させるニッチな市場だ。だが自動車メーカーにとっては、技術の粋を結集することでモノづくりのノウハウを生みだし、蓄積する絶好の場でもある。
日産自動車の新型GT―Rのエンジンは、熟練工が1台ずつ手組みしている。ホンダの新型NSXも米国で熟練工が手作りで組み立てている。伝統的な製造工程ばかりでなく、車体を載せた台を360度回転させてロボットが溶接する新たな生産技術も開発した。
その他にも10回も重ね塗りする塗装や、心地よい排気音を奏でるチタン合金製マフラーなど、メーカーはスポーツカーにさまざまな最新の要素技術を搭載している。こうした先端技術は将来、量産車にも適用されることもある。
量産車に比べるべくもない小規模生産のスポーツカーは、自動車各社の業績にはさほど貢献しない。リーマン・ショック後の業績低迷で、スポーツカーの開発プロジェクトそのものを縮小したケースもある。
ただ各社がモノづくり力を磨くためにも、スポーツカーは継続してほしい取り組みだ。クルマ好きの心を躍らせる新車開発は、必ず自動車そのものの技術発展につながるはずだ。
(2016/8/31 05:00)