[ オピニオン ]
(2016/6/21 05:00)
化石燃料の世界的な市況低迷を受けて、各国の石油・天然ガス開発企業が探鉱・開発投資の抑制に動いている。国内でも緊急性が低い探鉱などの投資を先送りする傾向が強まり、生産量の先細りが懸念される。資源の大半を輸入に頼る日本にとって内外の資源権益の拡大はエネルギー安全保障上、重要な国家戦略だ。国のリスクマネー供給拡大など、官民が一体となって権益確保を急ぐ必要がある。
経済産業省の2015年度エネルギー白書によると、日本の資源関連主要10社による16年度の上流開発投資は前年度より4割近く減る見通し。政府は石油・天然ガスの自主開発比率(輸入量と国内生産量のうち、わが国企業の権益下にある石油・天然ガスの引き取り量の割合)を30年までに40%以上に引き上げる目標を掲げている。だが14年度の実績は25%弱にとどまっており、開発企業が投資を抑制すればゴールはさらに遠のく。
一方で海外の有力事業者が、油価などの低迷を受けて投資先の資産を手放すケースが増えれば、日本勢が優良な権益を獲得しやすい環境が生まれる。政府は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)による出資や債務保証の枠を広げ、リスクマネーの供給量を増やすことを検討している。これを民間投資の呼び水として成果につなげてほしい。もちろんリスク管理を徹底して無軌道な投資を慎み、国の財政規律を守ることを忘れてはならない。
民間事業者も、投資の収益性やリスクを分析・評価する力と、投資の是非を素早く決断する意思決定力に磨きをかける必要がある。日本勢による石油・天然ガス開発事業の歴史は欧米資本に比べて浅く、経験が乏しい。これを補う手段として海外企業のM&A(合併・買収)や資本提携などの戦略を前向きに検討すべきだ。
経産省は今後の課題として、M&Aや戦略的な提携によるノウハウの獲得を重視している。収益力の強化に向けた官民の取り組みをうまくかみ合わせ、権益拡大への好循環を生み出してほしい。
(2016/6/21 05:00)