[ 人物 ]
(2016/6/21 05:00)
私は「ものづくり系女子」。製造業を勝手に応援する目的で3Dプリンター業界を中心に講演やワークショップを行ってきた。
就職活動で3Dプリンターを初めて知ったのが2007年。「技術をこんなにかっこよく見せられるんだ」と翌年、製造コンサルティング会社に入社。経済学専攻の私は、理系女子ならぬ「理転女子」として社会へ踏み出した。
入社後3カ月間の研修。図面の読み方から3次元CAD設計の基礎、工場での金型製造、何もかもが初体験。現場では作業着に安全靴の毎日だった。
女子が珍しい現場。周囲から「ものづくり系女子」と呼ばれ、その肩書が気に入っていた。「アール部分がかわいい」「マシンの稼働音がメロディアス」ものづくりを女子の感性で楽しむ。知識や経験が足りず仕事に置いて行かれそうな時も、自分らしさを大切にしようと決めた。
11年、「ものづくり系女子」としての活動開始時には、ソーシャルメディアをいち早く活用し全国からメンバーやイベント参加者が集まった。渋谷パルコやカフェに3Dプリンターを持ち込んで展示やトークイベントを行う度に「ものづくり」という世の中では珍しいコンテンツが同年代に浸透していく実感があった。
女子大卒からの製造業就職は大きな変化に見えるが、両親の存在が根源にある。大分県佐伯市で医療機器製造、精密板金加工に夫婦で関わり、食卓の会話も「検査が」「加工のバリが」、週末には新日本製鉄(現新日鉄住金)の工場見学。自然とものづくりを教わった。
「ものづくりを身近な存在にしたい」。街角でコーヒーを飲むように、スタッフと会話をしながらものづくりを楽しむ。素材や作り方を自由に語り合える文化を作りたい。メイカーズムーブメントや工作機械の時間利用が可能なファブ施設の存在が追い風だ。
すてきな夫婦がいる話題のお店。そんな存在を目指して夫と「Little Machine Studio」を運営して一年。3Dプリンターをはじめ、デジタル工作機械のかっこ良さや面白さを伝えるメーカー横断型のショールームだ。もうすぐ生まれる子どもには、いつか私たちの「ものづくりの背中」がどんな風だったか聞いてみたい。
企画協力・日本女性技術者フォーラム(JWEF)
(火曜日に掲載)
wip取締役 神田沙織(かんだ・さおり)
〈プロフィル〉日本女子大家政学部卒業。3Dプリントサービス運営を経て夫と起業し現職。14年に「3D Printing Handbook」(オライリー・ジャパン)執筆。15年度総務省「異能vation」プロジェクト本採択者。
(2016/6/21 05:00)