[ オピニオン ]
(2016/7/13 05:00)
環境省は東京電力福島第一原子力発電所事故による放射性物質汚染土を、盛り土などの構造基盤材に再生利用する方針を打ち出している。国民の間には微量の放射線に対する不安があるが、被災地の復興に欠かせない施策だ。安全性を確認しつつ、再生利用に取り組みたい。
福島県内に残る汚染土は、最大で推計2200万立方メートル(東京ドーム18杯分)。原発周辺だけでなく広範囲の市町村の仮置き場に山積みされており、これが物心両面で被災地の復旧・復興を妨げている。
原発のある大熊、双葉両町では、中間貯蔵施設の整備が進んでいる。今春、各地の仮置き場からこの中間貯蔵施設への本格輸送が始まった。一方で汚染土を処理してから土木資材にする再生利用の安全性を巡り、議論が起きている。
汚染土の最終処分量を減らすためには、土中から放射性セシウムが付着しやすい細粒分を取り除いて再生利用することが不可欠だ。環境省は管理体制が明確な公共事業に限定して、処理ずみの土を土木工事の構造基盤材に活用する方針。放射性物質汚染対策特別措置法に準じ、用途ごとに住民や工事作業者が追加的に受ける年間線量を覆土などで抑える遮蔽(しゃへい)基準を設けた。
ただ処理ずみとはいえ、土中のセシウムは土木構造物の耐用年数を超えてごく微量の放射線を出し続ける。その点で「100年を超すような管理は非現実的」という反発が、関係者の一部から出ている。
東日本大震災の直後、全国の自治体はこぞって被災地復興に協力する姿勢を示した。しかし津波で生じたがれき処理では、住民の中に放射能汚染を懸念する声があったことから受け入れにきわめて消極的だった。
人体に影響のあるレベルは論外だが、微量の放射性物質まで完全に取り除くには膨大なコストがかかる。もともと自然界には放射線が存在しており、その強さは地域によっても大きく違う。政府は関係者に安全性を十分に説明すべきであり、あいまいな理由で再生利用が進まないようでは困る。
(2016/7/13 05:00)
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