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[ 科学技術・大学 ]
(2016/7/19 05:00)
国際宇宙ステーション(ISS)で9日から長期滞在中の宇宙航空研究開発機構(JAXA)の大西卓哉宇宙飛行士ら乗組員は19日、米ヒューストンのジョンソン宇宙センターと結んで軌道上で記者会見した。ISSに到着して約10日間が経過した大西宇宙飛行士は、ISSについて「無重力環境は本当に特殊な環境。浮かんだモノを360度すべての方向を探さないといけない。また足を必ずどこかに固定する必要がある」と笑顔で話した。今後について「体がISSの環境にすっかり適応した。宇宙空間に特有の仕事の仕方も身に付いてきたので、これから効率性を上げてばりばり仕事していきたい」と語った。
会見での主なやりとりは次の通り。
-ISSの住み心地はいかがですか。またロシア宇宙船「ソユーズ」の乗り心地は。
「ISSでの生活は、おいしいご飯もあまり食べられないし、シャワーもなく不便なところが多い。だが、地球の景色と無重力環境というISSにしかない良さもある。ソユーズは小さく狭いが、宇宙空間に慣れるという意味ではむしろ快適だった」
-地球にいる時に比べ、ISSでの快適な点と不便な点は。
「快適だと思うのは、ふわふわ浮いていられること。地球では朝の寝癖がひどいが、宇宙では寝癖の心配もない。不便な点はトイレだ。たかがトイレ一つ取っても大ごとで、行く時には心構えをしないといけない」
-宇宙では体に変化があるとされています。視覚など体に変化はありますか。
「見え方の変化はまだ実感していない。だが、ホコリやゴミが漂っているためだと思うが、目に関して言えば充血しやすいと感じる。また食欲がなくなった点も大きな体の変化。食べるとすぐ満腹になってしまい、なかなかおなかが空きにくい」
-まだ10日ほどですが、地球が恋しいと思ったことはありますか。
「地球が恋しくなるということはまだない。ソユーズから青色に見えていた海と黒に見えていた暗黒の宇宙のコントラストをすごいと感じた。またISSに来て、その大きさや『地上の上空400キロメートルにこんなものがあるのか』という感動が大きかった」
-このようなISSでの無重力環境を利用しどのような実験に携わりたいですか。
「微小重力下ではきれいなたんぱく質の結晶を作りやすい。この結晶を地上のX線で解析することで創薬につながる。またマウスを利用した小動物実験も始まる。こうした実験は地上の研究者の長い時間と労力のたまもの。宇宙飛行士は研究者の手や足となってISSで作業を行う。良い成果が出せるようにがんばりたい」
-ロボットアームを動かしてみてどのように感じ、興奮しましたか。
「ロボットアームを見て驚いたのは、その大きさだ。地上のシミュレーターで訓練している時はコンピューターグラフィックでしか見ていないので、大きさの実感はなかった。しかしISSに来ると、先端部分だけでも1・5メートル程の大きさがある。巨大なロボットアームが自分の操縦で手足のように動く感覚に感動した。シミュレーターよりもロボットアームの動きが安定していて、思った以上に作業しやすいと思った。ただ実際にアームを動かしている緊張感も大きかった。国産物資補給船『こうのとり』を把持する時には、プレッシャーの克服がカギを握ると感じた」
-有人宇宙開発の意義をどう考えますか。
「無人の宇宙開発ではできないことがある。例えば、人間の手で実験装置を制御する作業など、人間が直接作業する意味は大きいと思う。また宇宙医学など人間の体を対象にした実験も行っている。ISSに人が滞在する意味は、この10日間で強く感じた」
-最後に一言。
「これからISSという素晴らしい職場でばりばり仕事をしたい。地球の皆さんにここでの実験の成果を還元できるよう頑張りたい」
(2016/7/19 05:00)