[ ICT ]
(2016/7/22 05:00)
6日に米国などで配信を開始したスマートフォン向けゲーム「ポケモンGO」が世界を席巻している。スマホの位置情報などを活用し、仮想空間と現実空間を結びつけた新たな体験を提供。熱狂的なファンが増殖中だ。VR(仮想現実感)技術の普及の突破口となっているほか、現実の店舗などと連携した収益モデルとしても成果を挙げている。ゲーム業界は従来型のゲームから体験重視型ゲームに軸足を移しており、ポケモンGOに続く取り組みが増えそうだ。(松沢紗枝)
【現実空間と体感】
ポケモンGOは任天堂が生み出した大ヒットコンテンツ「ポケットモンスター」を活用したゲーム。これまで画面の中だけで楽しんでいたポケモンの探索や発見を、現実空間と結びつけて体感できる。米グーグルから独立し、位置情報を活用した陣取りゲームアプリ「イングレス」を提供する米ナイアンティック(サンフランシスコ)が開発を担当した。
日本のゲーム業界でも、ポケモンGOが打ち出した「体験」「体感」をキーワードにした展開の模索が活発化している。その筆頭が、10月発売予定のソニーのプレイステーション向け機器「プレイステーションVR」に代表されるVR技術の活用だ。セガゲームスがソニーの端末向けに提供するソフト「初音ミクVRフューチャーライブ」は、歌声合成ソフトから生まれたバーチャル・シンガー「初音ミク」のライブを疑似体験をする。「攻略」「経験値稼ぎ」といった旧来型のゲームとは異なる切り口だ。
【疑似体験を提供】
ゲーム業界でVRをけん引していきそうなのが業務用機器。アニメに登場するロボットの操縦や電車の運転など、現実にはできないことや日常で目にしているが手に届かないことについて疑似体験を提供する取り組みが目立つ。
バンダイナムコエンターテインメントはゲームセンターや専用施設に限らず、ショッピングモールや専門店などの一角にVR対応機種を設置することも検討している。同社では「魅力ある機種を開発すれば、その店舗の集客にも貢献できるのでないか」(AM事業部)と見る。
ポケモンGOはゲームの収益モデルという面でも新たなモデルを生み出している。同ゲームは一部アイテムの利用のための課金はあるが、基本のプレイ料金は無料。これまでの無料ゲームの収益はゲーム内の広告収入とアイテム課金に頼ってきた。だが、プレーヤーを外に連れ出し、特定の場所に集める仕組みにより、他業界と連携した新たな収入源となる可能性が出てきた。
【客数増相次ぐ】
国内では日本マクドナルドが連携サービスを提供すると発表。展開する店舗内でポケモンのダウンロードやアイテムがゲットできるといったサービスが想定される。
先行する米国では大幅に客数が伸びた事例が相次いでおり、今後も続々と企業が連携に手を挙げそうだ。イングレスもローソンや三菱東京UFJ銀行、伊藤園などと提携している。
ポケモンGOがもたらしたものは仮想空間と現実空間の融合、VR技術の可能性、実店舗との連携サービスだけでない。
20年前に商品化されたポケモンという既存のコンテンツが、やり方次第で世界的なブームを巻き起こせることも示した。
■菅官房長官が注意呼びかけ
菅義偉官房長官は21日午前の記者会見で、任天堂などが開発したスマートフォン向けゲーム「ポケモンGO」で安全上の問題が出ていることに関し、「公共マナーや安全性にいろんな懸念を持たれる方もいることは承知している」と述べ、使用する際の注意を呼び掛けた。
ポケモンGOは近く日本でも配信が予定されており、菅長官は「ゲームを楽しむ方が安全に行動できるように注意喚起を出した。しっかり守ってもらいたい」と述べた。
これを受け、政府の内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)は21日付でホームページ上に「位置情報ゲーム『ポケモンGO』に関する注意喚起について」を掲載。無料対話アプリ「LINE(ライン)」などを通じても、ゲーム利用時の注意を促した。
(2016/7/22 05:00)