[ オピニオン ]
(2016/7/22 05:00)
全国の自治体で、中小企業振興のための条例の制定が加速している。中小企業団体の調べによると、これまでに中小・小規模企業の振興条例を制定したのは、2016年1月末時点で38道府県。このうち8県が15年に制定した。市区町村でも147の例がある。
初めて県レベルで条例を定めたのは02年の埼玉県。12年に8県が制定するなど、最近になって条例制定の例が目立ってきた。こうした条例は理念条例と呼ばれており、自治体の基本的な姿勢や施策の大まかな枠組みを示したものだ。
例えば兵庫県では、議員提案に基づく「中小企業の振興に関する条例」を15年10月に施行した。全24条で構成しており、前文には中小企業、特に小規模企業の振興に県が先頭に立って取り組む決意を示した。第3条で基本理念、第4条で県の責務を掲げ、第23条では施策の実施状況の議会への報告を義務づける条文構成となっている。
基本的な施策としては、県による支援体制の整備や人材確保、新事業の展開、販路拡大、受注機会の拡大、事業継承などを規定。地場産業の振興や商店街の活性化に関する規定も盛り込んでいる。こうした内容は、条例を取り入れた多くの自治体に共通しているようだ。
兵庫県の場合、条例とは別に「ひょうご経済・雇用活性化プラン」があり、14年度からの5カ年計画で同プランに基づく個別の施策を進めている。県経営商業課の渕上茂也課長は「議会の発議でできた条例は、個別の施策を進める上で大きな後ろ盾になっている」と説明する。
同県の16年度予算では、中小企業・小規模企業振興の関連事業費が総額2946億6770万円と前年度比7・3%増の高い伸びを示した。県庁と議会が足並みをそろえた成果と言えそうだ。
条例を制定するだけで、中小支援ができたと考えてはいけない。地場企業の競争力向上や地域経済の発展は、自治体の不断の努力がなければ実現しない。条例を生かしつつ、どんな取り組みを進めるかが問われる。
(2016/7/22 05:00)