[ オピニオン ]
(2016/8/1 05:00)
日銀が半年ぶりに追加の金融緩和に踏み切った。政府があすにも発表する経済対策と歩調を合わせ、デフレ脱却と経済の活性化を図るのが狙いだ。ただ黒田東彦総裁が掲げる消費者物価指数2%という目標は遠のくばかりで、金融政策の手詰まり感が濃厚になっている。
日銀は1月の追加緩和でマイナス金利を導入した。これにより金利は全般に低下したものの、企業貸し出しや住宅建設の増加に結びついていない。金融界には「副作用の方が大きい」との不満もくすぶる。今回の追加緩和では現在のマイナス0・1%の金利を据え置き、上場投資信託(ETF)の買い入れ額を年3兆3000億円から6兆円に増額するにとどめた。
4月の金融政策決定会合で日銀は、2%の物価目標達成見通しを2017年度前半から半年間ほど先延ばす一方、追加緩和は見送った。6月の決定会合でも景気や物価の下振れリスクが拡大する中で追加緩和を打ち出さず、市場を失望させた。
今回まとめた「経済・物価情勢の展望」(展望リポート)では、目標達成時期は変更しなかったものの「海外経済の不透明感から不確実性は高まった」との文言を追加した。英国の欧州連合(EU)離脱決定に伴って世界経済の不透明感が増し、消費や設備投資が慎重になっている。またもや追加緩和をしないようだと、これまで「必要なら躊躇(ちゅうちょ)なく追加緩和を行う」としてきた日銀が信任を失いかねない状況に追い込まれていた。
直前に開かれた米連邦公開市場委員会(FOMC)は、英国問題の米経済への影響を見極めるとして利上げを見送った。また世界経済の不透明感を高めた震源地である英国は、金融緩和をしていない。こうした中でわが国が追加緩和に踏み切ったことは、海外から通貨安対策との批判を浴びても致し方ない。
日銀が2%の物価目標を掲げて異次元の金融緩和策を打ち出したのは13年4月。その後、追加緩和とマイナス金利を繰り返してきたが、一向に成果は見えない。日銀は金融政策を根本から再考する時期に来ている。
(2016/8/1 05:00)
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