[ オピニオン ]

社説/自動運転車の普及−米事故に臆せず正しい理解求めよ

(2016/8/2 05:00)

自動車の自動運転の研究が進んでいる。ただ新たな概念であるだけに、普及に向けた十分な社会的理解を得られていない。自動車メーカーは安全確保を第一に、利用者に正確な情報を伝えるよう努力する必要がある。

日産自動車は「走る・曲がる・止まる」という三つの基本機能すべてに自動運転技術を盛り込んだ車を今月下旬に発売する。売れ筋のミニバン「セレナ」の一部改良に併せ、自動運転システム「プロパイロット」に搭載するものだ。

この方式は、周辺環境が認識しやすい高速道路での単一レーン走行を前提に、ドライバーが事前に設定した車速で前の車と一定の車間距離を保って走る。前車が停止した場合は、車を止める自動ブレーキ機能を持つ。また車がレーン中央を走るよう自動操舵(そうだ)する。渋滞中などの追突事故防止には威力を発揮するのではないか。

折しも米国では、電気自動車(EV)専業のテスラモーターズの自動運転車が5月に初の死亡事故を起こしていたことが明るみに出た。ドライバーが運転中にDVDを鑑賞していたのではないかという疑いが報じられている。

テスラの自動運転システムは、米国道路交通安全局による定義では「レベル2」に位置するものだという。これは日産の新システムと同レベルである。自動運転システムは加速・操舵・制動のうち二つ以上を同時に行うが、運転の責任そのものは運転席に座るヒトにある。

「自動運転」という言葉が誤解を与えていないだろうか。米国当局が「レベル4」と定義づけた完全自動運転や無人運転だけが自動運転ではない。現段階では、自動運転システム搭載車といえども運転中にハンドルから手を離したり、DVDを見たりすることは許されない。その違いを自動車ユーザーに周知することが必要だろう。

こうした新概念のシステムは普及するほど欠点が修正され、事故を減らす効果がある。自動車メーカーはテスラの事故に臆することなく、着実な自動運転車の普及を進めるべきだ。

(2016/8/2 05:00)

総合4のニュース一覧

おすすめコンテンツ

「現場のプロ」×「DXリーダー」を育てる 決定版 学び直しのカイゼン全書

「現場のプロ」×「DXリーダー」を育てる 決定版 学び直しのカイゼン全書

2025年度版 技術士第二次試験「建設部門」<必須科目>論文対策キーワード

2025年度版 技術士第二次試験「建設部門」<必須科目>論文対策キーワード

技術士第二次試験「総合技術監理部門」択一式問題150選&論文試験対策 第3版

技術士第二次試験「総合技術監理部門」択一式問題150選&論文試験対策 第3版

GD&T(幾何公差設計法)活用術

GD&T(幾何公差設計法)活用術

NCプログラムの基礎〜マシニングセンタ編 上巻

NCプログラムの基礎〜マシニングセンタ編 上巻

金属加工シリーズ 研削加工の基礎 上巻

金属加工シリーズ 研削加工の基礎 上巻

Journagram→ Journagramとは

ご存知ですか?記事のご利用について

カレンダーから探す

閲覧ランキング
  • 今日
  • 今週

ソーシャルメディア

電子版からのお知らせ

日刊工業新聞社トピックス

セミナースケジュール

イベントスケジュール

もっと見る

PR

おすすめの本・雑誌・DVD

ニュースイッチ

企業リリース Powered by PR TIMES

大規模自然災害時の臨時ID発行はこちら

日刊工業新聞社関連サイト・サービス

マイクリップ機能は会員限定サービスです。

有料購読会員は最大300件の記事を保存することができます。

ログイン