[ オピニオン ]
(2016/8/18 05:00)
不要になった車いすを修理・再生し、アジアに送り届ける。通称「空飛ぶ車いす」の支援活動が全国の工業高校に広がっている。
その先駆けである栃木県立栃木工業高校は、2015年9月の関東・東北豪雨で被災した。実習用の工作機械などとともに、修理予定の車いすの一部が水没して「頭が真っ白になった」。地道に片付けと清掃を続け、なんとか12月には恒例のタイでのボランティア活動に11人の生徒が旅立った。
運んだ車いすは、分解して錆を落とし、タイヤ交換まで済ませたもの。加えて生徒らは現地で、車いす約50台の不具合を工具やヤスリ、溶接機を使って直す。利用者の目の前でステップやシートを微調整し、引き渡す。
活動はすでに20年以上。タイの大洪水や学校の事情で休止した時期を除いても、延べ2000台を超す車いすを届けた。相手は生徒の手を握り、満面に笑みを浮かべる。「涙を流す子もいる。これこそ心がふれ合う瞬間」と教諭の金田晋さん。
「モノづくりは必ずその過程で人をつくる」(作家の小関智弘さん)。同校では1年生で車いすの分解・組み立てを学び、先輩から「空飛ぶ車いす」の活動を受け継ぐ。若者の思いが詰まった車いすが、海外で乗り継がれる。
(2016/8/18 05:00)