[ オピニオン ]
(2016/8/30 05:00)
訪日外国人客を産業観光に誘致しようとする取り組みが、関西で本格化している。本年も好調に増加する外国人客だが、消費の中身は変化している。この機を捉え、地方の産業観光施設を活用した滞在型の産業観光を新たな日本のコンテンツとして育てるべきだ。
近畿経済産業局などは10月に、関西国際空港で外国人客向けの「関西産業観光博覧会」を開く。産業観光に特化した博覧会は全国初という。産業観光は歴史的・文化的に価値ある工場や機械などの産業文化財や製品を通じ、モノづくりの心にふれるものだ。これを外国人客向けの新たな観光のコンテンツに育てることを狙っている。
政府観光局が発表した7月の訪日外客数(推計値)は、前年同月比19・7%増の約229万人。15年と同様、1月から毎月増えている。一方、日本百貨店協会の7月の外国人観光客の売上高・来店動向によると、外国人観光客招致委員会委員店(84店)の免税手続きの総売上高は前年同期比21・0%減の約146億円。4月から4カ月連続前年割れとなった。
一時期、もてはやされた“爆買い”が転機を迎えたことは明らかだ。今後は各地の祭りや生活様式、食の魅力などを含めた観光の“深化”が求められる。
近畿経産局はウェブサイトで関西2府5県の産業観光施設約500件を紹介し、体験できる五つのモデルコースを設けている。関空で10月に開く産業観光博は、これをベースとしたもの。国の出先機関や関西の自治体、経済団体、交通機関、旅行会社が一堂に会する。
産業観光は、まだ欧米などごく限られた旅行者にしか支持されていない。ただ観光コンテンツとして定着すれば、地場産業の生産現場や工芸品の作業場に多くの旅行者の来訪が期待できる。日本のモノづくりに対する考えや丁寧な作業を理解してもらい、メード・イン・ジャパンの良さをあらためて知る機会にもなる。同時に地域経済の活性化や地方創生につながるはずだ。関西から是非、モデルケースを生んでもらいたい。
(2016/8/30 05:00)