[ オピニオン ]
(2016/9/7 05:00)
記録的な豪雨による水害が相次ぐ。8月下旬には観測史上初めて東北地方の太平洋側に上陸した台風10号が東北・北海道の広い範囲に浸水被害をもたらし、多くの人命を奪った。今月5日には台風12号が長崎市に上陸し、西日本各地で大雨への警戒が求められた。気候変動の影響もあって水災害の激甚化をあらためて認識させられるなか、産業界は豪雨・水災への備えを急がなければならない。
2015年9月の豪雨で鬼怒川など関東・東北の河川堤防が決壊。広い範囲で長期間の浸水が起きた。これを機に国土交通省の社会資本整備審議会は「大規模氾濫に対する減災のための治水対策のあり方について」をまとめ、同省は同年12月「水防災意識社会 再構築ビジョン」を策定した。
国交省はこれに基づき、堤防などハード面の整備については氾濫が発生した場合にも被害を軽減する「危機管理型ハード対策」の考え方を導入。堤防構造を工夫して決壊までの時間を引き延ばすなどの対策に取り組む。併せてソフト面の対策として、リスク情報の周知徹底と事前の訓練、避難のきっかけとなる住民への情報の即時提供などを掲げている。
水害リスクの高い地域に拠点を持つ企業にも、同ビジョンに準じる対策が急がれよう。突然襲う地震とは違って、雨雲の動きや当面の雨量を予測できる水害は、事前の備えで被害を軽減できる可能性が高い。
まず取り組むべきは情報収集と社内への伝達体制の整備だ。次いで、どのタイミングでどのような行動をとるかを事前に定める「タイムライン」がカギとなる。工場浸水を完全に防げなくとも、重要設備を高所へ避難させるなど事前に準備があれば災害時の操業停止期間を短縮できる。むろん時機を失することなく従業員を安全に避難させることが最優先だ。
国や自治体による気象や河川の現状の把握・分析の高度化と、情報を受ける企業の防災意識向上を水害対策の両輪として、豪雨や台風に強い社会基盤を築いてほしい。
(2016/9/7 05:00)