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[ 科学技術・大学 ]
(2016/9/13 05:00)
日本企業の研究開発が転換期を迎えている。IoT(モノのインターネット)や人工知能(AI)など新たなテクノロジーが台頭する一方、製品開発に求められるスピードは以前より格段に早くなった。旧来の自前主義から脱し、大学や研究機関など外部資源と連携するオープンイノベーションも本格化してきた。次世代ビジネスの創出に向け、企業の研究所は今、どう変わろうとしているのか。その姿を追う。
日立製作所は6月、東京大学と京都大学、北海道大学に相次ぎ「共同ラボ」を設置した。従来の産学連携とは異なり、大学内に拠点を設けて計30人の研究者を常駐させ、テーマの選定から協働する。「社会課題の解決」を目的に掲げ、徹底したオープンイノベーションを進める。
日立は2015年に研究開発部門を三つの「センタ」に集約した。これに続く形で事業部門も16年に再編しており、研究開発が全社をリードする形で攻めの改革を続ける。19年には、中央研究所内に新研究棟を設けるという“次の一手”も打ち出した。
三つのセンタのうち、将来のビジネスの芽を育てる探索型の基礎研究を進めるのが、「基礎研究センタ」だ。冒頭のオープンイノベーションを先導するほか、具体的なテーマとして、複雑な社会問題に対して即時に実用解を求める「イジング計算機」や、経営判断を支援するAIなどを開発する。難病を根治する再生医療や簡易がん検査、認知症の検査技術も研究している。
同社は日本最大級の研究者集団を抱え、博士号保持者の数も多い。特に基礎研究はこれまで、じっくりと腰を据えて一意専心に取り組んできた経緯がある。だが現在は、「基礎研究でも積極的に仕掛ける。成果が出たら、応用先が決まる前でも発信し、社会に価値判断を委ねる」(山田真治基礎研究センタ長)姿勢に転じた。意識するのはスピードだ。
同センタは物性研究にも強く、世界最高性能のホログラフィー電子顕微鏡など、優れた装置を多数保有する。これらの装置の利用を外部にオープン化する試みを近く始める。山田センタ長は「自社の“お宝”を囲わずに、社外の一流の研究者に使ってもらえば、新たな価値創造に結びつく」と期待する。
社会課題の解決に、オープンイノベーションの深化で挑もうとする同センタ。まずはいち早くスタートを切り、走りながら柔軟にフォームを変えていく戦略だ。
(藤木信穂)
(火曜日に掲載)
▽主な所在地=埼玉県鳩山町赤沼2520番地▽電話=049・296・6111▽主要研究テーマ=AI、再生医療、電子顕微鏡、脳科学、エネルギー▽研究者数=100人強
(2016/9/13 05:00)