[ 科学技術・大学 ]

研究所探訪(4)富士通研・知識情報処理研究所、深層学習の先をにらむ

(2016/10/4 05:00)

富士通は子会社の富士通研究所(川崎市中原区、佐々木繁社長、044・754・2613)が研究開発を担う。先端材料から半導体デバイス、ネットワーク、コンピューティングまで幅広く網羅する日本では数少ない研究機関といえる。

4月にトップが交代し、「人工知能(AI)研究センター」と「セキュリティ研究センター」を新設した。この2大センターを両輪に活動するのが「知識情報処理研究所」だ。所長の原裕貴取締役は「AIとセキュリティーは技術の裏表(うらおもて)だ」と語る。10ある研究所群の中でも、今、最も人員を拡充している。

AIセンター内の基礎研究を担うチームには、同社の強みである数理技術部門が構える。富士通研は歴史的に数学を駆使した研究に強みを持つ。スーパーコンピューターを使ったシミュレーションや予測、最適解を導く技術などで、こうした数理技術を今後、AIに本格導入する。

最近の研究の大きなトピックは、最先端数学のカオス理論や位相幾何学を使った「トポロジカルデータ解析」の活用だ。データを“図形”でとらえる人間の直感に近い手法で、現在主流のディープラーニング(深層学習)にはない特徴を持つ。

穴井宏和プロジェクトディレクターは「次世代AI技術のキーワードになる」とみる。

これにより、モノのインターネット(IoT)機器などから得られる複雑な時系列データも、自動で分類できるようになった。富士通のAI「ジンライ」に近く実装する。

国内唯一の産業数学の研究拠点である九州大学マス・フォア・インダストリ研究所には、共同で数理研究部門を設置した。有川節夫元九大総長をフェローとして招くなど、オープンイノベーションもより深める。

「まだ詳細は言えないが、理化学研究所などと行っている脳の研究をさらに発展させ、今後は『ディープラーニングの先』の技術を追求していく」(原所長)と狙いを定める。

(藤木信穂)

(火曜日に掲載)

▽所在地=川崎市中原区上小田中4の1の1▽電話=044・754・2613▽主要研究テーマ=AI、数理技術、自然言語処理、セキュリティー、生体認証▽研究者数=約150人

(2016/10/4 05:00)

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