[ オピニオン ]
(2016/10/6 05:00)
日本と中国の間のぎくしゃくとした関係が続いている。政治・外交の対立はいかんともしがたい部分がある。ただ産業構造の転換点にある中国との経済協力は新たな局面を迎えており、民間が果たす役割は大きい。
9月下旬、訪中した榊原定征経団連会長ら日本の産業界トップに対し、中国の政府関係者からは「日本の経験から学びたい」との声が相次いだ。中国の過剰生産問題の解消や構造改革の深化が、その念頭にある。
特に鉄鋼分野の過剰生産解消は世界的な問題になっている。一方で、この分野は両国関係が厳しい時代にも民間協力を進めてきた日中友好の象徴だ。
新日本製鉄(現・新日鉄住金)の君津製鉄所を鄧小平氏副首相が視察したのは1978年10月。今も残る「鄧小平階段」で同氏は、案内役の稲山嘉寛会長と斉藤英四郎社長に「この製鉄所と同じものを建設してほしい」と要望した。中国を代表する上海宝山製鉄所の原点だ。その宝山製鉄所を擁する宝鋼集団は、同じく新日鉄住金が技術供与する武漢鋼鉄集団との経営統合を決め、同国の過剰生産解消の一歩になると期待される。
鉄鋼に限らず、日本企業の多くは高度経済成長が一段落した80年代から合理化を進めてきた。産業界は、そのノウハウを提供することで中国の取り組みを後押しできると考えている。すなわち、新たな協力関係の素地はすでにある。
イノベーションでも新たな展開がありそうだ。中国の産業構造の転換は急激なスピードで進展しており、2016年上半期の国内総生産(GDP)に占めるサービス産業の割合は5割を超えた。日本が提唱する第4次産業革命「ソサエティー5・0」や中国が進める「中国製造2025」「インターネット・プラス」を両国の企業連携に生かす戦略も考えられる。
9月に中国・杭州で開いた20カ国・地域(G20)首脳会議では、安倍晋三首相と習近平国家主席の会談が1年5カ月ぶりに実現した。この機に産業界の日中間のパイプを生かし、両国の成長軌道を描きたい。
(2016/10/6 05:00)
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