[ オピニオン ]
(2016/10/27 05:00)
日産自動車が三菱自動車に対する出資手続きを終えて、正式に傘下に収めた。日産のカルロス・ゴーン社長が新体制の会長となり、三菱自の再建を後押しする。日産にとっての勢力拡大の意味も大きいが、まずは三菱自が燃費不正問題で失った信頼の回復を最優先すべきだ。
三菱自は2000年と04年のリコール隠し問題に続く今回の燃費不正の発覚で、日産の救済を受け入れる結果となった。問題発覚後の再測定でも不正を働くなど再三にわたり信頼を損なった。回復は容易ではない。
ゴーン氏は1999年、経営危機にあった日産に救済出資したフランス・ルノーから派遣された。大胆なリストラを進め、日産を立て直したことで名経営者として名をはせた。
かつての日産の経営危機は同社の構造的な問題だった。三菱自は今のところ、財務基盤を揺るがされるほどの事態に陥ってはいない。両社の状況は異なるが、ゴーン氏の再建ノウハウは大いに生かせるだろう。
ゴーン氏は三菱自の会長兼社長の益子修氏を、引き続き新体制の社長として選んだ。不正問題に対する経営責任が問われていた中で、辞意を固めていた益子氏を慰留した。三菱自の事業の継続性や、新たに仲間入りするルノー・日産連合のメリットの面でも益子氏が必要だと説得したという。
会見でゴーン氏は「益子氏が辞めるべきだという意見は理解できる。だがこれはビジネスだ。ビジネスにかなった決断をしたい」と説明した。益子氏にとっても重い決断だ。
今回の日産による出資は三菱自の救済の他に、合従連衡が進む世界の自動車業界の中で、日産の生き残りのための勢力拡大という側面がある。だが、ビジネス上のメリットを追求する大前提は、信頼の回復だ。
益子氏の留任によってメリットを得るとしても、三菱自の社員による真摯(しんし)な反省が失われ、不正の再発防止の取り組みが停滞することがあってはならない。ゴーン氏は信頼回復を最優先にした三菱自の再建に、その手腕を発揮すべきだ。
(2016/10/27 05:00)