[ 機械 ]
(2016/11/4 16:00)
工作油剤・クーラントは金属の切削加工や圧延などの機械加工によって発生する加工熱の冷却や切りくずの除去に欠かせない存在で、さまざまなモノづくりの現場で活用されている。メーカーは潤滑油をメーンに切削油や圧延油、防錆油、熱処理油など機能別に多様な製品を開発している。環境負荷低減の観点から水溶性油剤の使用が製造現場に急速に浸透しており、各社は製品の長寿命化、品質向上でニーズに対応。需要拡大を図っている。
品質向上でニーズに対応
工作油剤は切削および圧延、プレス、引き抜き、鍛造などの金属や機械加工の分野で幅広く用いられている。主な用途は潤滑と冷却で、特に潤滑は油剤の基本機能である。
工具表面に形成した分子膜によって摩擦が減少し工具摩耗の低減や加工効率向上に寄与する。分子膜は加工対象物(ワーク)との溶着を防ぐことから、切削工具の構成刃先の抑制やプレス加工での金型との分離などで性能を発揮する。
工作油剤は鉱物油(ベースオイル)を主成分とする不水溶性油剤と、ベースオイルと各種添加剤とを水で希釈して使用する水溶性油剤の2種類に大きく分けられる。不水溶性は潤滑を重視する場合に多く用いられ、効率や仕上げ面の美しさなど、油成分の性能そのままを使える点が優位とされ選ばれてきた。
モノづくりの進化支える
水溶性は通常、水で2―10%程度の濃度に希釈して使用される。これにより、一定量内の油成分が減って潤滑性は低下する。その半面、液体の温度は安定しやすく不水溶性よりも冷却性能が高くなる。ただ腐敗の問題があり、かつては不水溶性よりも潤滑性が劣るとされてきた。
こうした状況を解消するため、メーカーは水溶性油剤の潤滑性能の追求に加え、微生物の混入による腐敗や使用期間の短さを克服するロングライフ化など、水溶性油剤が抱える課題の解決に取り組み市場ニーズに対応している。
メーカーの研究開発によって現在、水溶性油剤の潤滑性能は飛躍的にアップ。微生物が繁殖しにくいバイオスタティックタイプなどの開発も進んでいる。一段のロングライフ化へ向けた研究も進展しており、メンテナンスなどアフターサービスを含めた営業提案を強めるメーカーも増えている。
このほか切削加工などモノづくりの現場では、油分流出による環境への影響や、オイルミスト発生による作業者の健康問題も懸念されている。この点で水溶性油剤は水で希釈して使うため油成分の使用絶対量が減る。ミストも発生しにくく、もともと油成分が少ないので発生しても作業者の負担を抑えられる。
工作油剤は工作機械の機能開発や加工素材の軽量・高硬度化などに応じる形で多様化し採用領域を拡大してきた。メーカーは今後も環境と調和する製品開発を積極的に展開し、日本、引いては世界のモノづくり進化を支え続けていく。
(2016/11/4 16:00)