[ オピニオン ]
(2016/11/9 05:00)
東京・日本橋を拠点に、再生医療などライフサイエンス分野の産学官連携を加速し、革新的な医療のエコシステム(生態系)構築を目指す新たな取り組みが始動した。人的交流や技術の交流が産業活性化の触媒となり、イノベーションを生むエンジンとなることを期待する。
活動を始めたのは一般社団法人ライフサイエンス・イノベーション・ネットワーク・ジャパン(LINK―J)。慶応義塾大学の岡野栄之医学部長が理事長を務め、三井不動産などが支援する。
運営諮問委員会として京都大学の山中伸弥iPS細胞研究所所長ら多くの分野の有識者が加わった。相互交流・会合の拠点となる『日本橋ライフサイエンスハブ』を活用し、同地域に医療ベンチャーなどを呼び込む構想だ。
日本はライフサイエンス分野の基礎研究では世界のトップレベルにある。だが基礎研究の実用化では米国や韓国などに後れを取っているとされる。
一方、2014年に「医薬品医療機器等法」と「再生医療新法」が施行され、再生医療製品の早期承認制度の導入や細胞培養の外部委託などがしやすい環境が整った。LINK―Jは、この流れを受けて新たなライフサイエンス産業を創造する多様な機会の提供を目指す。
具体的には特定のテーマを深く議論する勉強会や起業を志す個人やベンチャー企業を支援するプログラムなどを用意。投資家やベンチャーキャピタルからの資金調達や、事業会社とベンチャー企業を結びつけるイベントも計画している。
再生医療は2050年には国内市場で2・5兆円、世界市場で38兆円と飛躍的な成長が見込まれている。がんや難病など、これまで治療が困難だった病気の治療に道を開き、膨張を続ける社会保障費の抑制につながるものとしても期待される。
ただ先端分野であるがゆえに理学や工学、IT、人工知能(AI)などの多様な技術との融合が不可欠だ。日本の産学官の知の集積から、世界に新たな価値を発信してほしい。
(2016/11/9 05:00)
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