[ 政治・経済 ]
(2016/12/10 05:00)
経済産業省は9日開いた有識者会議「東京電力改革・1F問題委員会」で、東京電力ホールディングス(HD)の事業再編・統合に向け、原子力部門と送配電部門でほかの電力会社などと共同事業体を構築するよう求める考えを示した。資機材の共同調達や安全・防災対策での共同投資などに取り組み、合理化や新規事業創出につなげる狙い。一連の効果により福島第一原子力発電所の事故処理費用として、30年間程度で総額16兆円の原資を捻出させる方針だ。
福島の事故処理費用が想定より大幅に膨らむ見通しとなったことを受け、同委員会が同日まとめた東電の経営改革に関する提言の骨子に盛り込んだ。
原子力事業では安全性や経済性の向上、人材確保・育成などで他の原子力事業者と協力し、発電事業の海外展開や廃炉ビジネスにも共同で取り組むように求めた。送配電事業では共同調達によるコスト低減や、地域間の連系線を活用した需給調整の効率化を提唱。M&A(合併・買収)などによる海外展開も目指すように促した。
その上で共同事業体の創設に向け、分野ごとに次世代のリーダーを選抜して、権限を明確に委譲するなどの企業改革に取り組むように求めた。年内に中間報告をまとめる。
また骨子には事故処理の費用が、従来見積もっていた11兆円から21兆5000億円に膨らむとの見通しも盛り込んだ。損害賠償費用と除染費用の増大分は、国が一時立て替えるため交付する国債の発行枠を従来の9兆円から11兆円に拡大して賄う。賠償費用は東電HDを含む大手電力各社から「負担金」として毎年度回収してきたが、20年度からは新電力にも、送電線の使用料として総額2400億円の負担を求める方針だ。
(2016/12/10 05:00)