[ オピニオン ]
(2016/12/14 05:00)
与党の税制改正大綱でビール類の酒税の一本化が決まった。段階的に税率を変え、完了まで10年間をかけるというが、これが国内市場の縮小につながらないよう配慮が必要だ。
わが国のビール類の酒税は世界的にも特異な構造だ。麦芽比率によってビール、発泡酒、さらに麦芽比率の低い「第三のビール」に分かれる。税額は350ミリリットル缶でそれぞれ77円、46・99円、28円と大きく違う。
税額の差が小売価格に直結するため、サントリー(現サントリービール)が1994年に「ホップス」、95年にサッポロビールが「ドラフティー」を、ビールに区分されない発泡酒として発売したのを皮切りに、メーカー各社はこぞって新製品開発に走った。政府が発泡酒を増税すると、業界は「第三のビール」を開発して対抗した。
与党側は、現行の税制が国内でしか通用しない「ガラパゴス商品」の開発を招いている状況を問題視。2026年10月までに2段階で350ミリリットル缶あたりの税額を海外に近い54・25円に一本化し、並行して「ビール」の定義を拡大する新制度を打ち出した。これによってメーカーは原料の選択肢が広がり、より魅力的な味や香りの製品開発が可能になるという。
わが国のビール類の市場は15年まで11年間連続で縮小している。一方、ここ数年、価格が多少高くても個性的な味のプレミアムビールやクラフトビールが売れ始めている。高齢化の進展もあり、一気飲みで大量を飲むよりも、じっくり飲む味わいを好む消費者が増えてきたことが背景にあるとみられる。
より個性的な味や香りの商品が増えれば、国内市場の活性化が期待できる。日本ブランドの新たな商品として、海外への展開も見込めよう。
懸念材料は、税額が上がる発泡酒と第三のビールの目先の落ち込みだ。これまでの開発商品のメリットも薄れ、メーカーも新規投資が必要になる。思い切った税制改革だけに、政府はビール系飲料離れが起きないようメーカーと意思疎通を図り、市場を注視してほしい。
(2016/12/14 05:00)
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